プアマンズ・フライデーポロ

前回投稿した、〈Maison d’Artisan (メゾンドアルチザン)〉の鞄に関する記事。

こちらの作成に少し張り切り過ぎたということもあり、今回は小休止ということで、ライトな内容をお届けしたいと思います。

Luca AvitabileのFriday Polo

三寒四温も通り過ぎた今日この頃。

ウールやカシミヤのニットウェアに変わり、この時期にジャケットのインナーとして役に立っているのが、長袖のカノコ地のポロシャツです。長袖のカノコポロの定番といえば、イタリア・ナポリのシャツメーカー〈Luca Avitabile (ルカアヴィタービレ)〉のヒット商品〈Friday Polo (フライデーポロ)〉ではないでしょうか。

"Friday Polo" by Luca Avitabile
“Friday Polo” by Luca Avitabile
The Friday Polo - White - Luca Avitabile - Handmade Shirt
Discover our versatile polo shirts, perfect under tailored outfits. Designed with a shirt-like tail to stay neatly tucke...

私も数着買い求めましたが、1着4万円前後とポロシャツにしてはやや高め。

モスグリーンのFriday Poloとニットカーディガン
モスグリーンのFriday Polo。この色はコーディネートが難しくあまり活用できていない

ジャケットのインナーとしての使い勝手を追求してか (もしくは、単に発注者であるセレクトショップの匙加減なのか)、Friday Poloは他の既製品よりも袖丈が長めに設けてあるのがグッドポイント。私の手元の個体は、実寸 (何度かの着用・洗濯後ですが) で裄丈が88 cmほどとなっています。逆にいうと、Friday Polo以外のプロダクトの場合、肩幅や身幅を優先してサイズを選ぶと袖丈が心許なく感じることもしばしば。Friday Poloを買えば済むのかもしれないですが、価格が価格なのでおいそれと増やすこともできず。

似たようなポロシャツをオーダー

だったらオーダーしてしまえこの野郎、ということで、Luca Avitabileとは全然関係のないところで作ったのがこちらのダークブラウンのポロシャツ。かれこれ4年近く前のことですが。

The Poorman's Friday Polo
The Poorman’s Friday Polo

投じた費用はFriday Poloの半額程度。Friday Poloを引き合いに出しているのは、それとの共通点があるためです。

Caccioppoliのジャージーを使用

それは、Friday PoloをFriday Poloたらしめている、イタリア・ナポリの生地商〈Caccioppoli (カチョッポリ)〉による、肉厚のカノコ地を使っていることです。

下の写真のように、このポロシャツと本物のFriday Poloを比べてみると、生地の組織が非常に似通っているのがわかります。

Friday Poloの生地 (左) と国内で注文・縫製されたポロシャツの生地 (右) の比較
Friday Poloの生地と比較。いずれもCaccioppoliのジャージー

こちらは、Caccioppoliの〈Gli Uniti〉というシャツ生地を収録したバンチブックにあったもの。目付は250 g/m (幅は145-150 cmと記載) とのことですが、触った感じだと目付もFriday Poloの生地と同等に見受けるので、おそらく同じシリーズの生地なのだろうとみなしています。

縫製はドゥ・ワン・ソーイング

縫製は〈ドゥ・ワン・ソーイング〉によるもの。ただし、SPAレーベルの〈土井縫工所〉ではなく、ドゥ・ワン・ソーイングの取次店であるとあるオーダーサロンに依頼して仕立てていただいたものです。本品とは別に、土井縫工所でも長袖のポロシャツを仕立てていただいたことがあるのですが、土井縫工所ではFriday Poloと同じCaccioppoliのカノコ地は扱っていませんでした。すなわち、取次店の取扱い生地を持ち込んで作っていただいたことになります。

土井縫工所のパターンオーダーで製作したポロシャツ
土井縫工所のパターンオーダーで製作したポロシャツ。こちらは土井縫工所独自企画のカノコ生地を使用

最近はニットシャツが普及してきたとはいえ、通常は布帛を縫うシャツ工場でニット生地を縫うのは大変そうな気がしますが、Caccioppoliの肉厚カノコとなればなおさらです。柔軟に対応しているドゥ・ワン・ソーイングは流石といったところでしょうか。

なお、当時土井縫工所のオンラインストア上では、長袖のポロシャツは受注していませんでした。実際に、上のダークネイビーのポロシャツは、下の記事でも紹介した東京・新橋の直営店にて注文しています。

Friday Poloとの縫製の比較

話を件のポロシャツに戻します。

生地とは異なり、縫製には違いが垣間見えます。その際たる例が袖付けで、Friday Poloは手縫いで輪付けされています。

Friday Poloのアームホールの縫製
Friday Poloのアームホールの縫製。手縫いで輪付けされている

一方、このポロシャツは身頃から一直線に縫われているのがわかります。Friday Poloと比べると、縫製は幾分簡略化されたものといえます。

国内で注文・縫製されたポロシャツ (上・茶) とFriday Polo (下・緑) のサイドシームの比較
サイドシームをFriday Poloと比較

ただ、個人的には袖付けの技法はそこまで気にしません。伸縮性のあるジャージー生地なので、袖付けの如何で着心地に違いはほとんど無いように思われます。また、ヘビーなカノコなので手縫いならではの雰囲気めいたものもあまり感じにくいような。

なお、前立てに関しては、このポロシャツ (すなわちドゥ・ワン・ソーイングの型紙) の方がすっきりしていて好みです。個人的には、Friday Poloはちょっと前立てがモサっとしているような気がしています……。

Luca AvitabileのFriday Polo。前立て周辺
Friday Poloの前立て。幅は3.5 cm、台襟ボタンから下端まで24.5 cmと大振り
Luca AvitabileのFriday Poloとリネンのジャケット
Friday Poloに袖を通した様子。前立ての剣先が鳩尾まで伸びる。さらに、どういうわけか襟の座りがイマイチ
茶色のCaccioppoliのカノコ地で仕立てたポロシャツとリネンのジャケット
前立てが比較的コンパクトに作られている

加えて、襟が綺麗にロールするのが評判のFriday Poloですが、私が着るとどうしても襟の座りがいまひとつ。正しいネックサイズを選んでいるつもりなのに、なぜこうもしっくりこないのか……。〈Permanent Style (パーマネントスタイル)〉のSimon Crompton氏が着ている様子 (下のリンク) はいい感じに見えるのですが……。Friday Poloは第2ボタン (台襟ボタンの2つ下) の位置が低いので、前立てのボタンを2つ開けるのはトゥーマッチな気が。

The New Friday Polo
A new, more versatile version of the luxury polo shirt produced in collaboration with bespoke Neapolitan shirtmaker Luca...

ただし、本稿の主役であるカスタムメイドのダークブラウンの方も、襟の具合については特にどうといったことなく。襟周りの雰囲気醸成力という点では、ワンピースカラーにアドバンテージがあるような気がしています。

ワンピースカラーのポロシャツとリネンのValstarino
ワンピースカラーのポロシャツ。襟の座りがいい気がする。手持ちのポロシャツの中で一番襟が綺麗
コットンカシミヤ生地を使った、ワンピースカラーのプルオーバーシャツ
季節感が異なるが、同じくワンピースカラーのプルオーバーシャツ

プアマンズ・フライデーポロ

色々と脱線しましたが…… 生地は同等で、価格は半額。そんな理由で、「プアマンズ・フライデーポロ」なんて名付けてみたのですが、このポロシャツにもFriday Poloにも失礼でしょうか?

茶色のCaccioppoliのカノコ地で仕立てたポロシャツとネイビーブルーのジャケット
Authored by
Navy Circle

サルトリアル・クラフツマンシップを中心としたクラシックファッションを追いかけるY世代。Respecting the long-lasting classics and craftsmanship

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