FPMの金属製スーツケース (1) 購入のきっかけとBankコレクションについて

先日、いつものようにネットを徘徊していたところ、とある海外メーカーの商品の国内展開に関するニュースを目にしました。

報道自体は既に1年近く前のものなのですが、大手総合商社の〈伊藤忠商事〉がイタリアの鞄・キャリーケースメーカーの〈Fabbrica Pelletterie Milano (ファブリカペレッテリエミラノ、FPM)〉の独占販売権を取得したのだとか。

伊藤忠が伊ラゲージ「FPM」の独占輸入販売権を取得 マッシュを通じて展開 - WWDJAPAN
伊藤忠商事は、イタリアの高級ラゲージブランド「ファブリカ ペレッテリエ ミラノ(FABBRICA PELLETTERIE MILANO、以下FPM)」の日本での独占輸入販売権を取得した。2025年春夏シーズンからマッシュスタイルラボを通じて...
FPMの国内代理店によるティザーサイト
2025年2月現在、ティザーサイトが立ち上がっている
出典: https://fpmjapan.com/Teaser/

FPMといえば、パンデミックの前は〈United Arrows (ユナイテッドアローズ)〉や〈阪急メンズ東京〉などの店舗でよく見かけたものです。しかし、パンデミックに突入してからは、社会情勢の煽りを受けてか、めっきり見なくなってしまっていました。かつてはインポーターの〈サンフレール〉が国内卸を担っていたようですが、撤退してしまったのでしょうか。

そんな中、実は私はパンデミックでスーツケースをはじめとする旅行用品が安く放出された (?) タイミングで、FPMのスーツケースを1点仕込んでいました。

"Bank Trunk on Wheels" by FPM
“Bank Trunk on Wheels” by FPM

FPMのスーツケースですが、現状それほど知名度が高くないこともあってか、Webに情報があまり多く出てきていません。一方で、国内商流の発足によって今後プロモーションが活発になり、多くの方の関心を集めることになるかもしれません。また、最近はハイブランドの〈Gucci (グッチ)〉とのタイアップ商品でも話題を呼んでいるようです。

そこで時代を先取り (?) すべく、今回から2週にわたってFPMのスーツケースを取り上げたいと思います。

入手の経緯

私がFPMのスーツケースを入手するに至るまでにはちょっとしたエピソードがあり、まずはそちらに触れたいと思います。

イタリア・ミラノで実物を見に行くも……

以前、イタリア・ミラノにて、同国発の紳士服ファクトリーブランド〈Caruso (カルーゾ)〉の直営店に立ち寄ったことを紹介しました。

当時からFPMのスーツケースに興味があり、一目見たい、あわよくば連れて帰りたいと思い、ミラノの名門百貨店〈Rinascente (リナシェンテ)〉に訪れました。思惑どおり現物を見ることができたのですが、結局購入には至りませんでした。理由は失念してしまったのですが、恐らく価格に躊躇したのでしょうか。前述のCarusoの店に訪れた際も、洋服を買えずに不思議な小物だけを手に店を後にしたくらいですので……。

なお、その足でフランス・パリのこれまた老舗の百貨店〈Galeries Lafayette (ギャラリーラファイエット)〉にも向かい、結局〈Rimowa (リモワ)〉の〈Topas Titanium (トパーズタイタニウム)〉を購入しました。だったら最初から本命のFPMにオールインしておけばよかったのに……。

Galeries Lafayette Haussmann (ギャラリーラファイエットオスマン) の象徴的なドーム
Galeries Lafayette Haussmann (ギャラリーラファイエットオスマン) の象徴的なドーム

余談 – Rimowa Topas Titaniumの価格

なお、このRimowaのスーツケースは容積が80リットル台とやや大型のもの。〈LVMH (ルイヴィトンモエヘネシー)〉による買収後、私が購入した上のRimowaのスーツケースは〈Original Check-In L (オリジナルチェックインL)〉と名を変えて今に至ります。

"Topas Titanium" by Rimowa (2025年2月現在のラインナップにおけるOriginal Check-In Lに相当)
“Topas Titanium” by Rimowa (2025年2月現在のラインナップにおけるOriginal Check-In Lに相当)

私はこのRimowaのスーツケースを999ユーロ (VAT (付加価値税) 込) で購入しましたが、2025年2月現在、欧州向けのユーロ建ての定価は1,480ユーロ (VAT込と思われる) となっています。LVMH入りした割には、価格のアップリフトは思ったよりも小さい印象。私の購入当時はユーロが130円台中盤で、かつVAT (付加価値税) の還付もあり、最終的に円貨にすると12万円弱で入手したことになります。帰国後に調べたところ、並行輸入品を扱うオンラインストアだともう1万円ほど安く入手することもできた、と気付いたことを覚えています。

一方、Original Check-In Lの2025年2月現在の日本国内における定価は281,600円。欧州のVATをざっくり20%とすると、

(281,600 ÷ 1.1) ÷ (1,480 ÷ 1.2) = 207.6

と、1ユーロ200円近くの計算となります。私はLVMH軍団のブランドなんてモエシャンくらいしか接点がないのですが、なかなか足元を見られたものだなと感じました。

〈Shangri-La Singapore (シャングリラシンガポール)〉の〈Valley Wing (バレーウィング)〉宿泊者向けロビーラウンジ
〈Shangri-La Singapore (シャングリラシンガポール)〉の〈Valley Wing (バレーウィング)〉宿泊者向けロビーラウンジにて。大昔に泊まった時にヴーヴクリ子が大盤振る舞いで出てきたのが、LVMHとの最も強い絆かもしれない

値段が大きく下がったところで確保

その後、旅行や出張でRimowaのTopasを使い倒してきたのですが、家族旅行の際にはこのTopasと同じくらい大型のスーツケースがもう一点あった方がいいなと考えていました。パンデミックの初期は旅行なんてとんでもない…… なんて状況でしたが、政府の〈Go To トラベル〉キャンペーンが波に乗り始めた2020年の暮れに、ずっと心の片隅にあったFPMが安くなっていたので購入したという経緯です。

この後で掘り下げていきますが、〈Bank (バンク)〉コレクションの〈Trunk on Wheels (トランクオンウィールズ)〉というモデルです。

"Bank Trunk on Wheels" by FPM
“Bank Trunk on Wheels” by FPM
BANK TRUNK ON WHEELS moonlight silver | FPM
Exclusively Made in Italy, the Bank suitcases are inspired by the olden day trunks revised in a modern way. The aluminum...

※上のリンクは、日本からアクセスすると自動的に日本向けのティザーサイトにリダイレクトされてしまうため、頃合いを見てページの読込みを停止してみてください

私は当時、本品を10万円台半ばから後半程度の金額で入手することができました。2025年2月現在のEU向けの定価が1,678ユーロ (VAT込みかと) となっているので、上で書いたRimowaのTopas Titaniumのケースに匹敵するくらいのお買い得感があります。

FPMのBank Trunk on Wheels (左) とRimowaのTopas Titanium (右)
FPMのBank Trunk on Wheels (左) とRimowaのTopas Titanium (右)

FPMのBankコレクション

波打った板金のボディやロック金具、ハンドルなどが特徴的なFPMのスーツケース。上にも書きましたが、これらはBankという名のコレクションの製品となっています。

Bankコレクションの出自

Bankコレクションは、工業デザイナーのMarc Sadler (マルクサドラー) 氏によって設計され、2016年の〈Milano Design Week (ミラノデザインウィーク)〉にてデビューしたとのことです。登場してからようやく10年と、比較的若いプロダクトなのですね。

marc sadler creates italian-made luggage collection for FPM from recycled aluminum
designboom spoke to marc sadler about his fabbricapelletteriemilano collection, his design approach, the future of local...
FPMのBankシリーズのスーツケース上に刻印されたMark Sadler氏のサイン
刻印されたMark Sadler氏のサイン

他のメジャーなアルミ合金製のスーツケースと比較して

Rimowaの他にも、〈Zero Halliburton (ゼロハリバートン)〉や〈Tumi (トゥミ)〉の〈19 Degree Aluminium (19ディグリーアルミニウム)〉シリーズ、または〈Samsonite (サムソナイト)〉の一部機種など、さまざまな大手メーカーからアルミのスーツケースが提案されています。

Aluminum Luggage
The ZERO HALLIBURTON line of aluminum travel cases includes both carry-on and check-in sized models. Available in black,...
アルミニウム キャリーケース・スーツケース|TUMI(トゥミ)公式サイト
アルミニウム キャリーケース・スーツケースをお探しならTUMI(トゥミ)公式サイト。11,000円以上ご購入で全品送料無料。日本限定スタイル有。刻印サービス有。
アルミニウム|スーツケース、ビジネスバッグ/サムソナイト(Samsonite)公式サイト | Samsonite Japan
アルミニウム|スーツケースをお探しならサムソナイト公式オンラインストア。会員登録で全品送料無料。安心の正規品保証。最新の製品情報はこちら。

本稿に掲載した写真からも伺えるとおり、アルミのパネルにリベットが打たれた無骨で無機質なボディ。そんな中でも、FPMのBankシリーズは最もラギッドでインダストリアルな匂いがします。そうした中、本革製のハンドルが有機的なアクセントをもたらしている奥行き深いデザインです。

なお、Sadler氏のWebサイトでは、このBankコレクションを素材にした遊び心溢れるクリエイティブの数々を見ることができます。

Marc Sadler | FPM

アイコニックなロック機構

Bankコレクションのスーツケースにおいてデザイン上のアクセントになっているのが、特徴的なロック用の金具です。

FPMのスーツケースにおける特徴的な意匠のButterfly latch
FPMのスーツケースにおける特徴的な意匠のButterfly latch

下の写真はロックされた状態ですが、金具のハンドルを起こして反時計回りに180度回転させると、ツメの金具が起き上がってロックが解除される仕組みです。

FPMのWebサイトでは “Butterfly latch (バタフライラッチ)” と呼ばれるこの機構。どちらかというと、PA機器などの可搬型ラックケースなどでよく目にする金具です。日本語の呼称はさまざまのようで、「キャッチロック」「ヒネリファスナー」「ターンファスナー」といったものが見つかりました。例えばこちらの商品など。

なお、2つのロック金具の中間に設けられたダイヤルロックで施錠が可能です。もちろんTSAロックにも対応。

FPMのBankコレクションのスーツケースに内蔵されたダイヤルロック
内蔵されたダイヤルロック

その一方で、個々のロック金具に掛けるための南京錠も付属しています。内蔵のダイヤルロックで施錠は十分に行えますが、追加で南京錠も使えばより安心、ということなのでしょうか……。FPMのブランドロゴも何も入っていない、なんの変哲もない南京錠です。私は使っていません。

FPMのBank Trunk on Wheelsに付属していた南京錠
付属の南京錠

BankとBank S、Bank Light、Bank Zip DLX

ここまで垣間見てきたとおり、独自のデザインコードで設計されたFPMのスーツケース。

2025年2月現在では、私が選んだBankコレクション以外にも、〈Bank S〉〈Bank Light〉〈Bank Zip DLX〉というコレクションがラインナップされています。BankとBank Sはアルミニウム合金製で、Bank LightとBank Zip DLXはポリカーボネート製となっています。

プラスチックボディのBank LightとBank Zip DLX

ポリカーボネート製の2つのうち、Bank Lightはハードフレームタイプで、Bank Zip DLXはファスナータイプ。よりポピュラーなRimowaになぞらえると、Bank Lightが〈Hybrid (ハイブリッド、旧Salsa Deluxe/サルサデラックス)〉に相当するといえます。

一方、Bank Zip DLXが〈Essential (エッセンシャル、旧Salsa/サルサ)〉といった位置付けでしょうか。ファスナー開閉のBank Zip DLXには、スーツケース本体には前述の特徴的な金具は搭載されていませんが、付属のベルトにこの金具が付いているようです。

金属ボディのBankとBank S、違いはどこに?

一方、私もいまだによくわからないのが、BankとBank Sの違いです。

Bankは本革製のハンドルがオーセンティックな雰囲気を醸し出しており、ボディーカラーは多色展開となっています。一方、Bank Sはカラフルなラバーハンドルで、カジュアルさ・スポーティーさを覚えます。Bank SのSはスポーツ (Sports) のSなのでしょうか。なお、Bank Sのボディは地金の銀色しか選択肢がないようです。

ところで、欧州向けの価格を見ると、Bank SはBankよりも2割ほど安いように見受けるのですが、それにしては仕様の差分が小さい気がします。Bank Sの方がお買い得のように見えてしまうのですが、そんな受け止め方でいいのでしょうか?なお、購入当時の私はBankとBank Sの違いについて特に何も考えておらず、Steel Gray (スティールグレー) というボディーカラーに惹かれて、結果的にBankの方を選んだ次第です。

FPMのBank Trunk on Wheels。スティールグレー色のボディ
スティールグレー色のボディ

最後に

今回はまるっと前置きになってしまいましたが、私がFPMのスーツケースの購入に至ったエピソードを紹介しました。

本稿の執筆時点では、件の伊藤忠商事による国内展開はまだ始まっていない様子。いくらで売り出されるのか気になるところです。上でRimowaのOriginal Check-In Lの内外価格について触れましたが、仮に設定為替レートが同じくらいだとすれば、私が購入したBank Trunk on Wheels (EU向けは1,678ユーロ) は30万円くらいに落ち着くのでしょうか。

下の続きの記事では、Bank Trunk on Wheelsという機種について掘り下げていきます。また、上の価格予想の答え合わせにも踏み込んでみます。

Authored by
Navy Circle

サルトリアル・クラフツマンシップを中心としたクラシックファッションを追いかけるY世代。Respecting the long-lasting classics and craftsmanship

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