以前、オーダーシャツで有名な〈土井縫工所 (どいほうこうじょ)〉の直営店を訪れ、直営店舗限定で注文可能な〈プレミアム縫製〉でドレスシャツを作ったエピソードを紹介しました。
その際の主旨は、形態安定生地の生地を使った、ちょっとだけハイグレードな仕立てのシャツを作ることでした。当時選んだのは土井縫工所の自主企画による国産の生地だったのですが、追加で別の形態安定生地を選んで注文しています。それが、今回紹介する〈Canclini (カンクリーニ)〉によるものとなります。

冒頭からクシャッとしただらしない様相の写真ですが、こちらは弱めの脱水で洗濯機に掛けた後、吊り干しして乾いた状態を写したものです。そうした観点だと、シワも少なく優秀な形態安定性が伺えませんか?今回は、そんなドレスシャツを紹介したいと思います。
注文のいきさつ
とある日、たまたま土井縫工所のWebサイトに訪れた際に、Cancliniの生地の10%割引キャンペーンが開催されているのを目にしました。それが、今回のシャツを注文したきっかけとなりました。
前回の注文の際、取り扱いの形態安定生地として、土井縫工所の自主企画のものに加えてCancliniのものもあることを耳にしていました。しかしながら、舶来品ということもあってか、国産である自主企画のものと比べて幾分割高。そうした中、1割でも安くなるのであれば手が出しやすかろうと思い、再び東京・新橋の直営店の門を叩くこととなりました。
オンラインストアにはない、直営店ならではの実物生地のチェック。しかしながら、訪問当時はCancliniの形態安定生地は選択肢が非常に限られたものでした。確か、綿100%の形態安定生地は4, 5種類くらいしかなかったような……。そんな中でも、ワードローブに加えたいと思っていたサックスブルーに白のストライプの生地があったので、こちらを選択することとしました。

スワッチに価格が載っていますが、この生地でシャツを仕立てると基本料金は24,200円 (税込) となります。これが上述のキャンペーンで10%オフとなった後、プレミアム縫製などのオプション料が加わり、トータルでは25,000円強となりました。
CancliniのI-Marverousシリーズ
上のスワッチにも書かれていますが、今回選んだのは〈I-Marvelous (アイマーヴェラス?)〉というシリーズのものとなっています。下で紹介しているCanclini公式のInstagramポストによると、I-Marvelousは90番手双糸をフィーチャーしたものとのことで、CancliniからはI-Marvelous以外にも「ノーアイロン」を謳った生地が展開されているようです。I-Marvelousよりも上位に君臨するものとして、100双の〈Piave 100 Easy Plus (ピアヴェ100イージープラス?)〉があるのだとか。
一方で、完成したシャツには下のような紙タグが付いていました。

調べてみると、I-MarvelousやPiave 100 Easy Careといった形態安定生地は〈Globetrotter No Iron (グローブトロッターノーアイロン)〉という一連のコレクションを通じて展開されていることがわかりました。
The GLOBETROTTER NO IRON fabric is designed for business people, who are looking for a fabric that does not crease in a suitcase, remains perfect even after a long journey, and that can be worn directly after washing and drying without being ironed.
A test called Durable Press (AATCC 124) DP rating is used to evaluate the performance of the treatments. This test is based on a visual assessment of the appearance of the fabric after washing, according to standard tables ranging from 1 to 5, that is, ranging from the most wrinkled to the smoothest appearance. When the DP rating is higher than 3 the fabric is defined as No-iron; our fabrics ensure a DP rating above 3.5.
(拙訳) GLOBETROTTER NO IRONは、スーツケースの中でもシワにならず、長旅の後でも完璧な状態を保ち、洗濯・乾燥後はアイロンをかけずにそのまま着用できる生地を求めるビジネスパーソンたちのために作られたものである。
整理工程によって付加される生地の性能は、デュラブルプレス (AATCC 124) DPレーティングによって評価される。このテストは、洗濯後の生地の外観を目視で評価するもので、1~5、つまり最もシワの多い状態から最も少ない状態の有り様を定めた標準表に基づいている。DPレーティングが3以上の場合、その生地をノーアイロンとすることができる。当社の生地はDPレーティングが3.5以上であることを保証している。
出典: https://www.canclini.it/en/brands/canclini/collections-canclini/
ここでの「DPレーティング」とは、日本における服地の形態安定性の試験・評価に関する規格であるJIS L 1924規格とも関連するものでしょうか?JIS L 1924規格においても、Wash & Wear (W&W) 性のスコアが3.5以上であれば優秀なノーアイロン生地だという言説をよく目にしますが、この閾値が合致しています。AATCCはAmerican Association of Textile Chemists (米国繊維化学技術・染色技術協会) であり、JIS規格がAATCCの規格を参考に作られた、といったものなのかもしれません。
すなわち、Globetrotter No Ironコレクションの一員であるI-Marvelousシリーズも、上記のレーティングが3.5以上となる優秀な形態安定生地だ、ということになります。実際に、冒頭に掲載した吊り干し後の様子がそれを物語っています。

前回購入した、土井縫工所のオリジナル生地はこんな感じでした。

完成したシャツの様子
既に上にいくつか掲載していますが、完成したシャツの様子を。

生地にクロースアップしてみました。土井縫工所のWebサイトにはドビークロスだと書いてありましたが、ボタンは前回選んだものから変更し、厚みのあるものへ。個人的にはこちらの方が立体感があって好きです。

背中は見た目重視でスプリットヨークに。ジャケットを着ていれば見えない場所ですが。

着用してみた様子
最後に、袖を通してみた様子を少しだけ。

トラウザーズは国産のサキソニーで仕立てたもので、ほんのわずかですが、下の記事で取り上げています。
タイドアップしてジャケットを羽織ってみました。やや首周りが窮屈に見えますが、実際に着用している限りはそのような心地悪さはありません。襟元を正してから撮影すればよかったのですが。

前回の投稿ではジャカードのペイズリータイを特集しましたが、こちらはプリントのものです。
ジャケットについては、下の記事で紹介しています。
最後に
今回は軽薄なレビュー記事となってしまいましたが、少し前に仕立てたドレスシャツを紹介しました。

こちらの生地については、期待していた形態安定性は申し分ないので満足度は高いです。ただ、形態安定生地のシャツに1着25,000円強というのはやや高額かな、という印象。色柄もオーソドックス (私の見る目がないのかもしれませんが……) なので、土井縫工所オリジナルの生地がもう少しノーアイロン性能が高ければ、それで十分といえば十分なのですが。
この他にも、過去に誂えた注文服を中心に、私のドレスウェアに関するエピソードを紹介しています。よろしければ、下のリンクから併せてご覧ください。

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