YeossalのMTO靴を作る (1) 靴の本質とは別の部分で思ったこと

ドレスシューズ愛好家の間では定番のひとつとなりつつある、シンガポールのブティック「Yeossal (ヨーサル)」のMade-to-order (MTO) ドレスシューズ。

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ハンドラスティング (手釣込み)・ハンドウェルティングと機械に頼らないコンストラクションを駆使しながらも、比較的手の届きやすい価格帯で提供されているのが定評のようです。先日、初めてYeossalに注文したMTO靴が手元に届いたので (下の写真)、その過程を4つの記事にわたってご紹介させていただこうと思います。

Yeossal “Scotts” Semi-Brogue Adelaide Oxford

第1弾は、注文に至るまでに巡らせた取り止めのない考えの書き連ねですが、お付き合いいただけますと幸いです。

Yeossalについて思ったこと

Yeossalとは何者か…… については、もはやここで説明するまでもなく、過去2、3年にわたって日本の靴クラスタの間でも大変注目されている存在です。Yeossal自体は総合的な紳士サルトリアルファッションブティックとなっており、ドレスシューズにに限らず本格的なドレスクロージングが展開されています。

なぜ、これほど暑い国でクラシックファッションを?

そうした中で、Yeossalについて気になることが。

広く知られているとおり、シンガポールはほぼ赤道直下にある熱帯の国。常夏の国です。改めて年間の気候データを見てみると、年間を通じて平均最低気温が摂氏20度を下回ることはないようです。

シンガポールと東京の気温と降水量
出典: 地球の歩き方 | https://www.arukikata.co.jp/weather/SG/

そうした中で、大変失礼ではあるのですが、街を歩くシンガポールの人たちは、総じてファッション偏差値が低い印象を抱いていました。これは、日本を含む東アジア諸国やシンガポール以外の東南アジア諸国と比べての所感です。私自身、2016年頃からパンデミックが発生するまでは仕事で年に1、2度シンガポールを訪ねていました。仕事の合間にOrchard Road (オーチャードロード) などのハイストリートにも足を運びましたが、ファッションや美容に気を配っていそうな方はあまり見かけませんでした。なお、シンガポールは多民族国家ですが、特に華僑系の方に対してそうした印象が強かったです。

ただし、これだけ暑い国なのでそれも十分理解できます。ずっとここに住んでいれば、これほど暑い中毎日いちいち化粧したり着飾ったりしたい気にはならないだろうと思います。

シンガポール高島屋の催事コーナーにて。旧正月のデコレーションが垣間見える
夜のOrchard Road。やはり人々のファッション感度はあまり高くない。これだけ暑いのだから仕方あるまい

そんなシンガポールでトラッドファッションを追求するYeossal。とても野心的なブティックだなと感じます。もしかすると、顧客はシンガポール外の方が多いのかもしれません。Yeossalの靴のレビュー記事を調べていた際も、欧米を拠点とされる方のレビューを多く見かけています。パンデミックが終息して再度シンガポールに足を運ぶ機会が生まれれば、ぜひ店舗にも伺って色々と話を聞いてみたいと思います。

YeossalのMTO靴

Yeossalでは、MTO以外にも既成靴もラインナップされています。日本の「Oriental (オリエンタル)」やスペインの「TLB Mallorca (ティーエルビーマヨルカ)」などが展開されているようです。そうした既成靴とは別に、ハンドラスティング・ハンドウェルティングを売りにしたMTO靴がラインナップされています。なお、あまり明言されてはいませんが、YeossalのMTO靴は中国のどこかで製作されているとのことです。

詳しくはYeossalのWebサイトをご覧いただきたいのですが、モデル数が大変豊富です。

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加えて、ラストのラインナップも多いですね。

スクリーンショット出典: https://www.yeossal.com/en-intl/pages/y-by-yeossal-handwelted-mto

デザインの出自に対する指摘

幅広いラインナップのMTO靴を展開する一方で、下のブログのような指摘も見受けられます。

Scrolling through Yeossal’s Shoes page is like a who’s who of classic contemporary shoe designs, and in many instances, the designs seem very derivative of other, more expensive brands…

Again, I’m not 100% on board with the argument that this is inherently bad – shoe designs are often passed around and iterated on (see the number of Edward Green Galway clones from other brands) but there is a slightly uncomfortable element with taking the look but undercutting the price. It feels almost like a replica watch at a certain point.

(拙訳) Yeossalの靴のページを眺めていると、まるで現代のクラシックな靴の名鑑を眺めているようだ。Yeossalの靴の多くは、高級ブランドからの派生デザインであるように見受けられる。…

しかし、こうしたことが本質的に悪だと主張するつもりは一切ない。クラシックな靴のデザインは往々にして流用・転用を繰り返されるものである (他のブランドからEdward GreenのGalwayのクローンがどれだけ生まれているかを考えてみるとよい)。とはいうものの、見てくれは高級ブランドに似せておきながら安売りすることには、多少の違和感を禁じ得ない。ある意味では、レプリカ時計のようなものなのかもしれない。

出典: Yeossal Review – Thompson split-toe derby in oxblood hatchgrain leather
https://www.lovablebrogue.com/post/yeossal-gmto-review-thompson-split-toe-derby-in-oxblood-hatchgrain-leather

仮に「レプリカ時計」が高級時計のコピー品を指すのであればやや過激だとは感じますが、この指摘には私も幾分か同調するところがあります。例えば、下の「Gilstead」というモデル。羽根のスワンネックがステッチではなくパーフォレーション (飾り小穴) で形取られた作例がハイライトされていますが、これは福田洋平さんのシグネチャーだったような…ロングヴァンプのオックスフォードも福田洋平さんの定番となっていますので、福田洋平さんの定番デザインをそっくりコピーしているのかな… という疑いを向けずにはいられません。

スクリーンショット出典: https://www.yeossal.com/en-intl/collections/custom-handgrade-shoes/products/gilstead-mto

とはいえ、過去に顧客からそうしたリクエストを受け、Yeossalはそれに忠実に靴を製作し、その作例を掲載しているだけなのかもしれません。ただ、他の靴職人・メーカーのデザインを露骨に真似ているような印象を与えるのは得策ではない気がします。私がYeossalのEコマース担当なら、この作例はショップページに掲載はしないでしょう。なんとなくモヤモヤするのは、上のブログ著者と同じです。

最後に

今回は、YeossalとそのMTO靴に関して、靴そのものではない部分に関する雑多な感想を書くに止まってしまいました。ここから先は、MTOの注文について踏み込んだところに触れていきます。

今回、MTO靴の注文に際し、サイズ感の確認のためにフィッティングシューズを購入しました。次回は、そのフィッティングシューズの注文、およびフィッティングシューズを用いたサイズ感確認のエピソードを紹介したいと思います。

Authored by
Navy Circle

サルトリアル・クラフツマンシップを中心としたクラシックファッションを追いかけるY世代。Respecting the long-lasting classics and craftsmanship

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    レビュー服飾品ドレスシューズMade-to-Order

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