前回の投稿では、イタリアの〈Valster (ヴァルスター)〉によるブルゾン〈Valstarino (ヴァルスタリーノ)〉を取り上げました。
それに先立って、Valstarinoとは別のスポーティーなジャケットを紹介する記事を公開したのですが、その中で「ブルゾンとは何か」を議論しました。具体的には、トスカーナシアリングと呼ばれる少し変わったシアリング (毛皮のムートン) で仕立てたジャケットを紹介した記事でのことです。
アクセス解析をしていると、「ブルゾン ジャケット 違い」といった検索ワードでこちらの記事に辿り着かれている方が一定数いらっしゃることに気づきました。Googleでの掲載順位は極めて低いですし、そもそも私自身の環境で検索しても全然出てこないのに…… 不思議。
そんな気付きに触発されて、今回は件のディスカッションを独立した記事にスピンオフし、お届けしたいと思います。
「スポーティーな上着 = ブルゾン」なのか?
冒頭で言及したような、スポーティーなジャケット。


こうした類の上着は、概して「ブルゾン」と呼ばれることが多くはないでしょうか。特に、革のジャケットについては何でもかんでも「レザーブルゾン」と呼ばれるきらいがあるような。かく言う私も、冒頭で挙げたシアリングのジャケットの記事に着手するまで、そうした認識を持っていました。
「ブルゾン」は「ブラウジングジャケット」
早速本稿の結論に踏み込むかたちとなりますが、ブルゾンとは腰周りにリブやシャーリングを設けるなどすることで、裾が腰骨あたりの位置で止まるようにし、裾周りの生地を弛ませて着られるようにしたジャケットのことを指すようです。
ブルゾン (Blouson) はフランス語に由来することばですが、英語にすると “Blousing jacket (ブラウジングジャケット)” となります。着こなしの文脈において、インナーの裾をパンツにタックインし、生地を弛ませることを「ブラウジング」と呼ぶことからも、ブルゾンが元来意味するところが何かを窺い知ることができます。

なお、Blousingから接尾辞の “ing” を外すと、今日では主に女性の衣類である「ブラウス (Blouse)」をさすことばとなります。ブルゾン (Blouson) 同様、ブラウス (Blouse) もフランス語からの借用語であり (フランス語だと「ブルーズ」)、かつてブルーズと呼ばれた衣服の姿とは…… と歴史を紐解くとさらに解像度の高いブルゾンの姿が見えてきそうですが、難しそうなのでここでやめておくこととします。
「ブルゾン」と呼べるジャケット
答えが明らかにされたのでこれでおしまい、だと少し味気ないので、私の手持ちの洋服の中から、ブルゾンと呼べるジャケット・呼べないジャケットをいくつか挙げてみたいと思います。まずはブルゾンと呼べるものから。
Valstarino
1着目は、上でも挙げたValstarino。既出のものはリネンを使ったものですが、こちらはゴート (山羊革) スウェードのモデルとなります。腰の部分にリブが施されているので、ボタンを留めると上記のように裾が腰の位置で止まります。

シアリングジャケット
2着目は、冒頭のトスカーナシアリングとはまた別の種類のシアリングが使われたジャケットです。

こちらのジャケットについては、冒頭に挙げたシアリングブルゾンの記事にて少しだけ紹介しています。
Zanoneのスタンドカラーカーディガン
3着目は、〈Zanone (ザノーネ)〉の〈Chioto (キョート)〉を挙げてみました。ニットのスタンドカラーカーディガンの代名詞でもあるこちらの洋服も、裾がリブで絞られているので、一種のブルゾンと呼べるのかもしれません。

有名なところでいうと、米空軍の〈MA-1〉や〈Baracuta (バラクータ)〉の〈G9〉などがブルゾンにカテゴライズできます。私の手元に該当するものが無いのですが、ドローストリングで裾を絞れる洋服も一種のブルゾンなのかもしれません。
「ブルゾン」と呼べないジャケット
翻って、元来の言葉の意味に照らし合わせるとブルゾンとは呼ぶべきでないかもしれないジャケットをいくつか。
トスカーナシアリングのジャケット
1着目は、本稿公開のきっかけとなったトスカーナシアリングのジャケット。裾を絞るような作りにはなっていないのがわかります。

冒頭にも掲載しましたが、念のためこちらのジャケットをハイライトした記事のリンクを下に再掲しておきます。
Isamu Katayama BacklashのOriceライダースジャケット
2・3着目は、日本のレザーウェアブランド〈Isamu Katayama Backlash (イサムカタヤマバックラッシュ)〉のライダースジャケット。過去にも紹介したもので、色違いで黒・赤を所有しています。


この手のジャケットは「レザーブルゾン」と呼ばれがちですが、前述の定義に照らし合わせるとブルゾンではないということになります。
Ruffo Research x A.F. Vandevorstのレザーライダースジャケット
4着目は、レザーウェアを得意とするイタリアのファクトリーブランド〈Ruffo (ルッフォ)〉がかつて展開していた、著名デザイナーを招いてのコレクションレーベル〈Ruffo Research (ルッフォリサーチ)〉のジャケットです。

前身頃に設けられた2つのファスナーや大きめのハンドウォーマーなど、少しヒネリが利いたダブルブレストのライダースジャケット。〈A.F. Vandevorst (エーエフヴァンデヴォースト)〉とのコラボレーションによるもので、2000/2001年秋冬のミラノファッションウィークに出展された一着です。
もちろん、コレクション当時リアルタイムで入手したものではなく、2000年代 (ゼロ年代) 後半に最初の1着を古着で入手しました。その後金策で一度手放したり、サイズが合わなくなって手放したりと、計3着購入・放出を繰り返した、私にとって思い入れのあるレザージャケットです。
A.F. Vandevorstは、2020年春夏コレクションを最後にブランド終了となっているようです。また、Ruffoも2023年を最後に公式Instagramが更新されていないため、こちらもクローズされてしまっているのでしょうか。現地の商工会議所のWebサイトを見ると、Ruffo S.p.A.は清算中だと表示されていたので、倒産してしまったのかもしれません。

最後に
今回は、過去の記事で触れたトピックを拡大し、「ブルゾン」と呼ばれる洋服とは元来どういったものなのかについて踏み込んでみました。
いつも以上に中身のない記事で恐縮ですが、これまで以上に当Webサイトが「ブルゾン ジャケット 違い」について知りたい方の役に立つと嬉しく思います。
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