前回の記事にて、ベルトのバックルを交換する構想を紹介しました。銀色のバックルやアクの強いバックルを、ドレッシーな金色のバックルに交換したいという考えです。
今回は、交換先のバックルを探し求めた時のエピソードを紹介したいと思います。
前回の続き – 代わりのバックルをいかに入手するか?
バックルの交換に際して、代わりのバックルをいかに入手するか。前回も言及したとおり、金色のバックル、特に真鍮ではなく金メッキのものは選択肢が豊富ではありません。
国内外のオンラインストアを探す
まずはレザークラフト関連の国内のオンラインストアから探し始めましたが、真鍮のものは多少存在するものの、金メッキのバックルはほとんど見かけません。eBayやEtsyなどの海外サイトも探してみましたが、ピンとくるものは出てきませんでした。
(AliExpressには一見良さそうなものもいくつかあったのですが、品質に不安があり却下)
途中、アメリカのベルトのオンラインストアにて下のようなバックルを見つけ、非常に高い期待を持ちました。真鍮に金メッキされたもの (Gold plated brass) で、価格は20米ドル。安くはありませんが、手が出ないほどでもありません。しかしながら、問合せの結果、送料が80米ドル近くになると告げられ、流石に高すぎるだろうと撤退。
中古のベルトをバラす
色々と思案を巡らす中で、中古のベルトを解体して金具だけを再利用するのも選択肢のひとつだと閃きました。革の状態が悪く叩き売られているものの、金具の状態が良好なものがあればベストです。そうした淡い期待を胸に、フリマサイトを2-3週間ウォッチしましたが、結局良さそうなものには出会えませんでした。
そんな中、今回のベルトとは別件で調べごとをしていた際に、下の記事を発見します。
私は浅草橋界隈のレザークラフトの店には何度か足を運んだことがありますが、さらに蔵前まで北上すれば金具街があることは知りませんでした。個人的な関心の高まりもあり、平日に休みを取ってこの金具街に足を運んでみることにしました。
蔵前の金具街へ
今回訪れた金具店は、いずれも東京・台東区は新堀通り沿いの特定の区域に集中しています。調理用品の問屋街として有名な浅草のかっぱ橋道具街の通りを南下すると、新堀通りに至ります。北は春日通り、南は蔵前橋通りに囲まれた500 m程度の範囲に、下で紹介する4件を含む複数の金具店が集中しており、一度にまとめて訪問することが容易です。
今回は、都営地下鉄浅草線の蔵前駅を出て、南から北上することにしました。
三洋商会
最初に訪れたのが、〈三洋商会〉という会社の店舗。
結果として、店の佇まいという点では一番気構えせず伺えるお店でした。メインは卸売なのでしょうが、一般ユーザーにも優しいお店だと感じます。
しかしながら、ベルト用のバックルは取扱いがなさそうでした。どちらかというと、鞄類 (袋物と呼ぶようです) 向けの金具が多い印象です。バックルは見つからなかったものの、別件で探していた金メッキのカシメなどを仕込んでおくことができました。
なお、現在は休止中とはなっているものの、カタログとして使えそうなオンラインストアがあります。店舗にはここに掲載されていないものがあったり、逆に更新が間に合わず店舗に在庫がないものもあるかもしれませんが、訪問前にこちらを見ておけば効率的に探し物ができそうです。
横谷
続いて、〈横谷〉という会社の店舗に訪問しましました。
三洋商会と同様に、こちらも袋物向けの金具が多く、ベルト用のバックルとして目ぼしいものは見つからずでした。
一方で、ダレスバッグやアタッシェケースなどに使えそうな錠前が豊富に揃っていました。これらは、同社のオンラインストアにも掲載されています。舶来物の上等そうな金具です。鞄を誂える際の金具の下見にはもってこいかもしれません。
なお、南に下って浅草橋の方にある〈MK Plus+〉という金具の小売店も、横谷の系列であるようです。私もMK Plus+の方には過去に何度か足を運んだことがありますが、今回はスキップしました。
柳場美錠
社名に「美錠」とあるとおり、バックルが専門と思しき〈柳場美錠〉にも赴きました。Webで検索したところ、真鍮金具の供給元としてレザークラフト界隈で有名な会社のようです。自社Webサイトなどは見当たりませんでした。
確かに、ベルト用のバックルもいくつか陳列してあるのですが、ほとんどが仕上げ前の「生地」と呼ばれる状態となっています。どうやら、生地の状態で形を選んで、メッキなどの仕上げを別途注文する仕組みのようです。せっかくのバックル専門店でありながらも、1, 2個のロットでメッキを依頼するのは流石に難しかろう、と退散することに。もしかすると応じていただけたのかもしれませんが、店内の方の「忙しいからあまり話しかけてくれるな」オーラに屈してしましました……。なお、小売自体は対応しているようです。
名物?と名高いお姉さま方には遭遇せず。
宮田金属工業
新堀通りを北上して、最後に訪問したのが〈宮田金属工業〉
確信は持てていないのですが、ここまでの3件はいずれも金具問屋ではないかと思われます。
(柳場美錠は製造もしているのかもしれませんが、詳しい情報がなく不明)
一方、宮田金属工業は自社で金具を製造するメーカーのようです。同社のWebページを拝見するに、金型製作からメッキまで自社で一貫して手がけているのだとか。
入り口には、圧巻のバックルのショーケースがあります。普通の事務所のようで少し入りづらいですが、2階のショールームには個人の訪問も受け入れてもらえる模様です。
幅30 mmと33-35 mmのベルト用のバックルで、金メッキ磨きのものが欲しい、と伝えたところ、この辺りの棚を見るといい、と案内していただけました。バックルは全部で100種類を超える数がありそうですが、やはり金メッキのものは数が限られます。金の価格が高騰しているので金メッキもコストが高くついてしまう、という声も聞かれ、バリエーションが限られてしまうタイミングであることも一因かもしれません。そうはいうものの、これまで訪れた3件よりも選択肢は多いです。
そんなこんなで、宮田金属工業にてバックルを数点購入することとなりました。
購入したバックル
実際には、今回は4点のバックルを購入しました。全て、真鍮の生地に金メッキがなされたものです。価格は、税抜で1点あたり400円から650円程度でした。
帯幅が35 mmの〈Orciani (オルチアーニ)〉のベルトには、今回入手したものの中で唯一35 mm幅である下のバックルを。35 mm幅のものは下のもの以外にピンとくるものがなく、この1点だけを購入しました。もう少しシンプルな角形のバックルがあればよかったのですが、金メッキのものはやや奇を衒った形状のものが多いように見受けました。
一方、帯幅が30 mmの〈Giorgio Zoni (ジョルジオゾーニ)〉のベルトには、少し風変わりですが下の細身のバックルを当てがおうと考えています。元の状態と真逆の雰囲気を持たせる形となりますが、ミニマルでエレガントなものにしてみるのも一興かと考えた次第です。
ただし、この金具は腰ベルト用ではない可能性が考えられ、そうした場合は金具自体の強度が不十分かもしれません。ベルト職人の方に見ていただいて、強度不足が疑われる際には下のもので代替しようかと考えています。
最後に
今回は、ベルトの金具を求めて下町の問屋街を訪問したエピソードをご紹介しました。幸いにも、望んでいた金メッキのバックルを入手することができ、バックル交換を前進させることができそうです。
一般消費者がバックルを1, 2個買い求めるのであれば、まずはレザークラフト関連の小売店を訪ねてみるのが最善でしょう。私は実際に訪問したことはありませんが、もしかすると東急ハンズにも十分な選択肢があるかもしれません。一方で、レザークラフトの小売店では見つからないような特殊なものを探されているのであれば、宮田金属工業をはじめ蔵前の金具店には一見の価値があるかもしれません。
次回の記事では、今回入手したものを元に、バックルの交換を発注する過程を紹介しています。
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