いつも当Webサイトをご愛顧いただき、ありがとうございます。
ドレスクロージングをメイントピックとしている当サイトですが、最大のキラーコンテンツは何だと思われますか?ビスポークの品をはじめとしたドレスウェアやドレスシューズを紹介する記事……
と言いたいところなのですが、一番多く閲覧されているのは下の記事なのです。
フィットネストラッカー〈Fitbit Charge 5 (フィットビットチャージ5)〉の度重なる不具合について、不満を書き散らかした投稿です。「Fitbit Charge 5 壊れやすい」といった検索クエリで訪問されている方が多く、少なくない数のユーザーが私と同様に、Fitbitのトラブルに悩まされているということでしょうか。
そうした想定外の反響を踏まえて、今回は私が使っているFitbit Charge 5の後日談、そして少し珍しいタイプのフィットネストラッカー (と呼んでいいのかは議論の余地ありですが) を試すこととなったいきさつをお届けしようと考えました。
私のFitbit Charge 5のその後
先般の投稿より早1年半となりますが、私のCharge 5といえば……。

実は、お陰さまであれ以来何の問題も起こしておらず、すこぶる順調です。上の記事を公開したことがある種の厄落としになったのでしょうか……。
さまざまなメトリクスを活用
Fitbitといえば、昨年2024年の暮れに「有酸素運動負荷」という新たな測定指標が追加され、ワークアウトの負荷を定量的に記録・レビューするのが一層便利になりました。元々は、Fitbitを買収したGoogleによる〈Pixel Watch (ピクセルウォッチ)〉シリーズで利用可能だった指標が、Fitbitにも遅れて実装されたという経緯のようです1。

疲労度の指標になる安静時心拍数や、有酸素運動を続けるうえでの目標となる最大酸素摂取量 (VO2max) など、過去の記事では言及しなかった各種測定機能を余さず活用しています。ただし、VO2maxはFitbitアプリ上では「有酸素運動のフィットネススコア」という名称のもので、安静時心拍数などから推定される数値です。すなわち、実質的に安静時心拍数の2次的な指標に過ぎません。
前述の安静時心拍数や心拍変動などを基に、毎日の体力の回復度合いを示す「今日のエナジースコア」という指標がありますが、こちらは体感とのズレが大きくあまりアテにならない感があります。こちらの指標、以前は有償サブスクリプションの〈Fitbit Premium (フィットビットプレミアム)〉に加入していないと表示されないものでしたが、いつの間にか無料開放されているようです。こうした動きもあり、Fitbit Premiumは解約してしまいました。

睡眠状態の解析・記録
もうひとつ、個人的に重視しているFitbitの機能があります。睡眠状態の解析・記録です。

ただし、Fitbitは脈拍や加速度センサーを通じた体の動きから睡眠解析を行なっていますが、これはあくまで簡易的なもの。Fitbitが示す睡眠ステージ (睡眠段階とも) は、元来脳波や筋活動、眼球運動によって判定されるものであり、Fitbitが示すのはその推定に過ぎません。
余談ですが、脳波測定といえば、瞑想という限定的な用途に特化したものですが、〈Muse 2 (ミューズ2)〉というデバイスが私の手元にあったりもします。

睡眠について抱える諸問題
Fitbitによって明らかにされる睡眠状態。このデータから、そして体感からも、私は長らく睡眠に問題を感じていました。

睡眠の質への課題感
ここ2年ほどは、余暇などの時間を削れるだけ削り、なるべく7時間は床に就くよう心がけてきました。このようにして睡眠の量は最低限のものを確保するよう努めているのですが、漠然と「あまりよく眠れない」感覚が強い。換言すれば、「睡眠休養感」が乏しいのです。Fitbitで測れる睡眠ステージの推移からも、「深い睡眠 (一般に言う「N3睡眠ステージ」に相当するものと思われる)」が少ない傾向が続いており、悩みの一端が垣間見えていました。

睡眠の質を高めるべく、過去何年にもわたって以下のような習慣を継続してきました。我ながら、かなり意識が高い方ではないかと思っています。
- 15時以降はカフェインを一切摂取しない
- 19時以降は部屋の照明を暖色 (電球色) にし、以後段階的に暗くする
- 夕食は、可能な限り入眠の4時間以上前に済ませる。遅くとも3時間前には済ませる
- 寝る前に、軽く体のストレッチをする
- 就寝時は部屋を完全に暗くする
しかしながら、特に仕事が多忙な時は、深夜遅くまで液晶ディスプレイの画面と対峙せざるを得ないこともしばしば。ディスプレイについては、下の記事で紹介した自動照度調整機能を内蔵した外付けディスプレイを使用しています。部屋が明るい分には照度調整がうまく機能してくれるのですが、部屋をある程度暗くすると制御が追随せず、部屋の明るさに対してディスプレイが眩しすぎる状態に。これは、望まぬ脳の覚醒につながりかねません。そのため、遅い時間には外付けディスプレイは接続解除し、より照度を下げられるMacの内蔵ディスプレイで作業するようにしています。
睡眠時無呼吸症候群…… ではなさそう?
また、家族から就寝中のいびきを指摘されることもありました。深刻な場合は睡眠時無呼吸症候群 (Sleep Apnea Syndrome, SAS) が疑われるケースもあり、診断には睡眠外来の検査入院を通じた検証が必要とされています。
Fitbitによって測定される「血中酸素ウェルネス」
Fitbitでモニタリング可能な指標のひとつに、睡眠時の「血中酸素ウェルネス」というものがあります。
血中酸素ウェルネスは、一部の国・地域では血中酸素飽和度 (SpO2) としてFitbitのディスプレイやアプリ上に現れるものですが、Fitbitが日本では医療機器としての認証を取得していないためか、SpO2ではなく血中酸素ウェルネスという名称としているようです。私の場合、このスコアが常に94%以上で推移していたので、SASの可能性は低いのではと考えていました。

Fitbitの限界
注意すべき点としては、Fitbitと指先に取り付けて測定するパルスオキシメーターとでは測定原理が異なり、SpO2測定の信頼性はパルスオキシメーターに軍配が上がるとされていること2です。指先の端から端まで透過させた光を測るパルスオキシメーターと、反射光に頼るFitbitのようなリストモニターの違いといったところでしょうか。

Image by ai subarasiki from Pixabay
また、血中酸素ウェルネスは前述の睡眠ステージとは異なり、一晩を通じたSpO2の推移を確認することはできず、一晩につき1ポイントの値しか得ることができません。加えて、Googleのヘルプを確認してみたのですが、血中酸素ウェルネスは就寝中のSpO2の平均値なのか、それとも最頻値や中央値なのか、はたまた10パーセンタイルといった劣悪値なのかがわからず、半ばブラックボックスとなっています3。SASによる無呼吸状態は就寝中に突然発生するものであろうことを考えると、一晩の代表値ではなく、分単位・秒単位でサンプリングされたデータがほしいものです。
検査入院はちょっと大袈裟?
SASの疑いが強いなら、睡眠の質の問題全体を掘り下げることも含めて、検査入院で白黒つけるという選択肢もあります。上の睡眠ステージに関連して書いたような、脳波や筋活動などの測定・解析を行う終夜睡眠ポリグラフ検査 (Polysomnography (PSG) 検査とも) という検査ですが、ちょっと大袈裟な気もしてしまいます。
脳波ベースの睡眠解析サービス〈InSomnograf〉を知る
そうしたなか、検査入院ではなく、脳波測定用のデバイスを借りて自宅で睡眠解析を受けられるサービスがあることを知りました。筑波大学発のスタートアップ企業〈S’UIMIN〉による、〈InSomnograf (インソムノグラフ)〉というサービスです。
確か、きっかけはYouTubeのサジェストに出てきた、下の〈WIRED (ワイアード)〉による〈Tech Support (テックサポート)〉シリーズのコンテンツだったはず。7:26頃から当該のサービスに関する説明があります。
専用の脳波計を借り受け、自分で脳波電極やパルスオキシメーターを取り付けて床に就き、自宅で数晩睡眠状況をモニタリングするというもの。その詳細は、次回の記事で紹介したいと思います。

5晩分のサンプルを取れる魅力
あくまで素人目線ではありますが、個人的にいいなと感じたのは、プランによっては5晩分のサンプルが解析対象となること。
詳しくは存じ上げませんが、検査入院でのPSG検査の対象は高々1晩のはず。眠りの質は日によってばらつきが大きい感があるなか、たった1晩のデータで全体像が掴めるのか疑問が残ります。5晩だと十分といえるのかは不明ですが、このサンプル数の差異は大きな違いだと感じます。もちろん、PSG検査の方が用いるセンサーの種類などの観点でより多面的な検査ができる、または医療従事者の監督のもとでより確実な検査ができるものと想定され、InSomnografはあくまで簡易化された検査手法だと位置付けておくのが望ましいかもしれません。
InSomnografには5晩のプランと2晩のプランがあり、前述のように5晩の方は測定サンプルが多いのに加え、レポートに専門家による踏み込んだアドバイスが記載されるなどの特典があるとのこと。5晩のプランの検査料は、私が申し込んだ2025年1月当時で25,000円 (税込)。もちろん、健康保険の対象外です。
検査入院とも費用は大きく変わらない?
一方、SASの治療に使用される持続陽圧呼吸療法 (Continuous positive airway pressure, CPAP) 装置を製造・販売する帝人ファーマによる下のWebページによると、PSG検査の検査料は3割負担で1 ~ 3万円とのこと。幅があるのは病床などの条件によるものと考えられますが、概してInSomnografとPSG検査とのあいだで費用に大きな隔たりはないといえるかもしれません。

提携医院を通じて申し込み
こうした経緯で知るところとなったInSomnografというサービス。早速申し込んでみることにしました。
申し込みは、本サービスを取り扱う医院を通じて行う必要があります。提携医院の一覧を眺めたところ、幸先よく自宅から徒歩圏内にある心療内科が見つかりました。ただし、こちらの医院は睡眠外来は手掛けておらず、InSomnografを通じて何か顕著な問題が見つかった際には、転院が必要となる可能性があります。先々のことを考えておくなら、睡眠外来を受け付けている医院を選ぶのが吉かもしれません。
また、今回は上記の心療内科での診察を経てInSomnografを申し込むこととなり、実際の費用はInSomnografの検査料に加えて心療内科での診察料を伴うものとなりました。医師の診察後に、InSomnografの申込みフォームのURLが案内されます。自分のスマートフォンでユーザー登録や申込み手続きを進め、クリニックで費用を支払いました。
最後に
今回は、過去に不具合で悩まされたFitbitのその後と、新たに関心を持ったInSomnografというサービスについて紹介しました。実際にInSomnografを試してみてわかったことは、次回の記事で紹介したいと思います。当サイトの主旨はこれまでどおり服飾関連ですが、今年はInSomnografのようなヘルスケア・ウェルビーイング系の情報発信にも力を入れていきたいと考えています。
件の不具合の記事以降、Fitbitを取り巻く環境は大きく変わりました。GoogleのPixelブランドとの整理・統合が進んだ結果、Fitbitブランドのスマートウォッチが廃盤となってしまったほか、いくつかの国・地域で販売終了となっているようです。

Chargeシリーズを含むフィットネストラッカーは今もラインナップに残っていますが、この先どうなるのでしょうか。トラッカーハードウェアのモデルチェンジが終息となるのは仕方がないものと受け止めますが、10年にわたって愛用してきたサービスが終了となってしまうのであれば、中々の痛手です。Google先生、どうかFitbitをできるだけ長く延命してあげて……。
コメント 本記事の内容について、ぜひ忌憚なきご意見をお寄せください。いただいたご質問やフィードバックには、可能な限り迅速かつ丁寧にお答えするように努めます。もし、匿名・非公開のフィードバックをお寄せになりたい場合は、ページ上のフィードバック欄をご利用ください。