Lands’ Endの日本撤退を惜しむ (2) カシミヤニット編

前回、2022年末をもって日本市場から撤退する米国のカジュアル衣料メーカー〈Lands’ End (ランズエンド)〉のTシャツ「スーパーT」について紹介しました。

大人買いしたスーパーT
大人買いしたスーパーT

この機会に大人買いしたのは、スーパーTだけではありません。もうひとつ、今更ながら気になったアイテムを紹介・レビューしたいと思います。

カシミヤのプルオーバー

店じまいセールにて、カシミヤ100%のニットウェアも割引後の価格で1万円前後とお手頃になっていることに気付きました。商品説明から、クオリティへの意気込みが伝わってきます。

Lands’ End「カシミヤタートルネック」商品ページ
Lands’ End「カシミヤタートルネック」商品ページ
スクリーンショット出典: https://www.landsend.co.jp/pp/JP447506F.html

商品説明には、以下のようにあります。

着こなしを美しく格上げする、
最高峰の内モンゴル産100%。

世界最高峰の内モンゴル産カシミヤを100%使い、密に編みこんだ贅沢なクオリティを、重ね着しやすい適度な厚みの、ボディに無駄なく沿うフィット感で仕上げました。ジャケットのインにしてもスマートに決まり、装いを美しく格上げしてくれます。作りはもちろん、ひと目ひと目成型しながら合わせていく、丁寧なフルファッション編み。すべてに満足できる、理想のカシミヤ・セーターを目指しました。

出典: メンズ・ランズエンド・カシミヤ/タートルネック/長袖 | ランズエンド
https://www.landsend.co.jp/pp/JP447506F.html

こちらも物は試しと、12ゲージのタートルネックのプルオーバーを一着購入してみました。

Lands' Endによる12ゲージのタートルネックプルオーバー。色はキャメル
Lands’ Endによる12ゲージのタートルネックプルオーバー。色はキャメル

安価な「カシミヤ」について感じること

世の中には、「カシミヤ」こそ謳いはするものの、品質がそれに追いついていないものが散見されます。具体的に挙げるのは憚られるところですが、百貨店の催事に並ぶカシミヤニットやファストファッションブランドのカシミヤニット。いずれも、あくまで店頭で売られているものを触ってみただけで購入したことはないのですが、品質には疑問符がよぎります。

最終的にガッツリ割引されて、これらの「カシミヤ」と同価格帯となったLands’ Endのカシミヤ。クオリティのほどはいかがなものでしょうか。

イタリアブランドとの比較

届いた一着は、〈Zanone (ザノーネ)〉や〈Drumohr (ドルモア)〉〈Roberto Colina (ロベルトコリーナ)〉といったイタリアのニットウェアブランドのカシミヤに引けを取らないグレードだと感じます。もちろん、この辺りのファクトリーブランドの場合、一口に「カシミヤ」といえども発注元の企画によってグレードが左右されるのは想像に難くありません。

そうした中、たまたま伊勢丹別注のRoberto Colinaの12ゲージのニットが、新品の状態で手元にありました。

Roberto Colinaによるカシミヤ100%のニットプルオーバー
Roberto Colinaによるカシミヤ100%のニットプルオーバー

定価は5万円弱で、メーカータグにはイタリアの紡績メーカー〈Cariaggi (カリアッジ)〉で紡績した系を使っていることが明記されているものです。ファッションメディア〈WWD〉の下の記事によると、Cariaggiはサプライチェーン管理を通じて高品質なカシミヤの原糸を供給することで定評のあるメーカーのようです。

https://www.wwdjapan.com/articles/719843

Lands’ End・Roberto Colinaともゲージも同じで、触った感じの目付 (編地の重さ) も大体同じに感じます。あくまで新品の状態で、という条件付きですが、このRoberto ColinaとLands’ Endを比べてみましが、触ったり、着用したりする限りではクオリティに違いは見られません。

もちろん、Lands’ Endのカシミヤが最上というわけではありません。私が所有する範囲の比較だと、大阪の紡績・毛織物メーカー〈深喜毛織 (ふかきけおり)〉のオリジナルカシミヤニットや、日本のニット専業メーカー〈Gim (ジム)〉のカシミヤニットの方が明らかに質が高いです。原毛のグレードや紡績の質が違うのでしょう。

Gimによる無染色のカシミヤ原毛で編まれたショールカラーのプルオーバー
Gimによる無染色のカシミヤ原毛で編まれたショールカラーのプルオーバー

写真での比較は難しいですが、Lands’ End、Roberto Colina、Gimのカシミヤニットを並べてみました。真ん中のキャメル色がLands’ End、左のオレンジがRoberto Colina、右の生成り色がGimです。上記のとおり、Lands’ EndとRoberto Colinaは12ゲージです。Gimは7ゲージで、3着とも未使用の状態です。

Lands' End、Roberto Colina、Gimのカシミヤニットを比較
Lands’ End、Roberto Colina、Gimのカシミヤニットを比較 (1)
Lands' End、Roberto Colina、Gimのカシミヤニットを比較
Lands’ End、Roberto Colina、Gimのカシミヤニットを比較 (2)

こちらも1万円ちょいでこれだけのグレードのものが手に入るならば… ということで、着古し後のストックも含めてガッツリ仕込んでおきました。カラーバリエーションが多いのも嬉しいポイントです。

色ち買いしたカシミヤニット
色ち買いしたカシミヤニット

着てみた

Lands’ Endのカシミヤニットを、厚手のフランネルのカシミヤでできたトレンチコートのインナーにしてみました。

Lands' Endのカシミヤニットと、カシミヤフランネルのトレンチコート
Lands’ Endのカシミヤニットと、カシミヤフランネルのトレンチコート

焦茶色のラムレザーのジャケットに差し込んでみると、こんな感じです。

Lands’ Endのカシミヤニットと、ラムレザーのジャケット

最後に

スーツ・ジャケットなどの重衣料は、手入れに気を配ることで10年以上にわたって着用し続けることもできます。一方、Tシャツ・カットソーやニットウェアは洗濯のうちに傷みが生じてしまい、見窄らしくなってしまいます。そうしたことから、2, 3年の短いサイクルで使い捨てせざるを得ません。そうしたことから、品質とコストのバランス、すなわち「コスパ」に敏感になってしまいます。

そんな中、Lands’ Endのように高品質なTシャツ・カットソーやニットウェアを安価に提供する選択肢がなくなってしまうのは大変残念です。日本からの撤退は「戦略的な決定」とのことで、多くは語られていません。そうした決断の分析は他に任せますが、日本で高品質な衣類が手に入る「当たり前」がなくなってしまう事態が今後も続出するのかもしれません。

ただ、今回最後にその存在に気づくことができたのはとても幸運でした。

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