過去2本の記事にて、「一本木の傘」の定義とその魅力について紹介させていただきました。
前回と同じ趣旨のもと、今回はイギリスのメーカーによる一本木の傘についてご紹介します。前回同様、情報は2023年2月時点のものとなります。
Fox Umbrellas
舶来高級傘の定番といえば、「Fox Umbrellas」ではないかと思います。
そして、Fox Umbrellasの定番といえば、巻いた時の姿が美しい細巻き傘です。細巻きは金属の細い中棒を使うからこそ成し得るもの、すなわちこちらの分類に基づくとTubeの傘にカテゴライズされるものでしょう。
その一方で、Fox Umbrellasからも一本木の傘が多くラインナップされています。Fox Umbrellasのラインナップにおける特徴は、エキゾチックウッド (Exotic wood) が準備されていることでしょうか。
エキゾチックウッドは、国内またはヨーロッパ域内で自生しておらず、供給を海外に頼るような木材を意味します。その中でも、特に熱帯雨林に由来するものを指すことが多いようです。建材や家具などの文脈で耳にする概念です。ギターのボディの材料としても選ばれることがあるようですね。Fox Umbrellasでは、エキゾチックウッドを使った一本木の傘は「EX range」という最上位のクラスに分類され、それ以外の一本木の傘は「RS range」にカテゴライズされています。
RS rangeには、以下のように豊富な樹種のオプションが見受けられます。木材の供給元は英国内のものもあれば、欧州の他国や北米なども見受けられます。
- アッシュ (Ash、セイヨウトネリコ)
- オーク (Oak、ナラ)
- オリーブ (Olive)
- コンゴウッド (Congo)
- チェスナット (Chestnut、クリ)
- チェリーウッド (Cherrywood)
- ヒッコリー (Hickory)
- ヘーゼルウッド (Hazelwood、ハシバミ)
- メープル (Maple、カエデ)
一方、EX rangeには以下のような樹種があるようです。
- エボニー (Ebony、黒檀、供給元: カメルーン)
- オリーブ (Olive、供給元: 欧州内)
- チューリップウッド (Tulipwood、供給元: ブラジル)
- ココボロ (Cocobolo、供給元: メキシコ)
- マカッサルエボニー (Macassar、供給元: インドネシア)
最も高額なマカッサルエボニーの傘は1,500英ポンドを上回る、大変ラグジュアリーな傘となっています。EX rangeとRS rangeのオリーブの違いは、よくわかりませんでした。
Fox UmbrellaのEX rangeは、私には手が届かないですが、写真からも大変強いオーラを感じます。望むらくは、日本の甲州織の傘やFrancesco Magliaのように、もう少しファンシーな張地のオプションがあればという感じです。
入手性
東京・青山の「Vulcanize London (ヴァルカナイズロンドン)」の店頭に、RS rangeの一本木の傘が並んでいました。
樹種はオークか何かだったような記憶です。RS rangeであれば、Made-to-order (MTO) にも対応しており、傘布や中棒・手元の素材を指定して注文することも可能なようです。
一方、EX rangeの傘は取り扱いが無いようでした。Vulcanize Londonでは取り寄せも対応できないとのことです。やはり、傘の中では大変高額な部類のものとなるからでしょうか。
Swaine
Fox Umbrellasと双璧を成す傘メーカー「Brigg」は、高級紳士洋品メーカーの「Swaine & Adeney」と統合して「Swaine Adeney Brigg」となったのち、今は屋号を「Swaine」としています。
Swaineからも一本木の傘がリリースされています。例えば、下のモデルですね。
スクリーンショット出典: https://swaine.london/products/oak (2023年2月) Swaineより展開される、オーク材を使った一本木の傘
樹種としては、以下のチョイスがあるようです。
- オーク
- チェスナット
- チェリーウッド
- ヒッコリー
- メープル
入手性
Fox Umbrellasと同様にVulcanize Londonを訪ねてみましたが、扱っているのは折り畳み傘のみでした。今後、長傘も取り扱うようになるかも?とのことでした。今後に期待ですね。
最後に
ここまで、私の方で気になる一本木の傘を紹介してきました。
改めてラインナップを俯瞰してみて、個人的に気になるのはMario Taralicoの傘とFox UmbrellasのEX rangeの傘ですね。いずれも、イタリア・イギリス現地に赴かないとフルラインナップは確認できなさそうなので、今後渡航する機会が得られることを楽しみにしたいと思います。
なお、番外扱いにしたいのですが、日本の雑貨メーカー「松野屋」でも、独自に一本木の傘を取り揃えているようです。
これまで紹介した舶来の選択肢と比べると、顕著に安価です。
スクリーンショット出典: https://matsunoya.jp/catalogue/catalogue-12797 (2023年2月) 松野屋が展開する、一本木と思しき傘
東京・谷中の小売店舗に行けば実物を見ることができそうなので、機会があれば訪れてみようと思います。
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