前回の記事にて、私の手元の傘も交えて、「一本木の傘」の定義とその魅力について紹介しました。
いつか一本木の傘を手にしたいと考える私の観点で、現在手に入る既成の一本木の傘の候補について調べてみました。
その結果を、今回はイタリアメーカー、次回はイギリスメーカーと、2回に分けて紹介ていきます。
また、一本木の傘という主旨を鑑み、中棒・手元の樹種にも着目していきたいと思います。
なお、情報は2023年2月時点のものとなります。継続的な更新は予定しておりませんので、ご了承ください。
Francesco Maglia
イタリア・ミラノの傘メーカー「Francesco Maglia (フランチェスコマリア)」
明るくカラフルな色使いが、特にイギリスの定番傘メーカーと比べた際に発揮される魅力かと感じます。
傘布は、絹織物で有名なコモで生産されているようです。コモといえば、ミラノからのエクスカージョンの定番であるコモ湖のある街ですね。
絹織物の名産地によるポリエステルの傘布。これは、前回紹介した槙田商店などによる甲州織との類似性を窺わせます。
個人的な話ですが、2017年頃にミラノに訪れた際、市街からバスを乗り継いでFrancesco Magliaの工房を訪問したのですが、その際はなぜか工房が閉まっていたのがいい (?) 思い出です。
日本でのFrancesco Magliaの展開
なお、日本国内では、「Maglia Francesco (マリアフランチェスコ)」と銘打って展開されていることが多いようです。
私も当初は「Maglia Francesco」と認識していましたが、本国での表記が「Francesco Maglia」のため、こちらに合わせています。
ブランドの名前は、創設者であるFrancesco Magliaさんに由来しているようです。
“Francesco” はファーストネーム、”Maglia” はラストネームなので、Francesco Magliaの方がイタリアのブランド名としては自然な気がします。
日本の氏名表記の順番に沿って、日本ではMaglia Francescoとしたのでしょうか?
Francesco Magliaといえば、日本国内で流通しているものは下のスクリーンショットのように、手元が本革巻きになった傘が主流のイメージです。

翻って、一本木の傘のラインナップはどのようになっているのでしょうか?
一本木の傘のラインナップ
Francesco Magliaのオンラインストアにアクセスすると、商品カテゴリのひとつとして「Solid Stick」が用意されています。
私としては、下のようなモデルが気になります。ビンテージっぽい柄の傘布を使用した、楓の一本木の傘です。
ただ、”Tessuto: 100% nylon stampato” とあるので、柄は紋織で表現されているのではなくプリントのようです。実際に実物を手に取って、風合いを吟味したいところですね。
下のWebページに掲載されている写真を見ると、手元から中棒までが一つの木になっていることが見て取れます。

一本木ではなく、分類としてはStickになるのですが、手元に寒竹を使った下のモデルも素敵だなと感じました。
こちらは、中棒はブナを使っているようです。

一本木のモデルを一通り眺めて見ると、中棒・手元の素材としては以下の選択肢がありそうです。
(Stickの傘に使われる手元の素材 (上の例の寒竹など) は、下のリストには含んでいません)
それほど珍しい樹種はなさそうですが、ナラやクリ、アッシュなどはイタリアの木を使っていることが強調されていました。
- アッシュ (Ash、セイヨウトネリコ)
- オーク (Oak、ナラ)
- チェスナット (Chestnut、クリ)
- ビーチウッド (Beechwood、ブナ)
- ヒッコリー (Hickory)
- ヘーゼルウッド (Hazelwood、ハシバミ)
- メープル (Maple、カエデ)
入手性
Francesco Magliaの傘ですが、2023年2月現在、日本での入手性はあまり良くないようです。
紳士洋品を扱う東京都内の主要な百貨店として、伊勢丹メンズ館、阪急メンズ東京、日本橋三越の3店を訪ねてみましたが、取り扱いがあるのは伊勢丹メンズ館だけでした。
ただし、伊勢丹メンズ館で取り扱いがあるのは、上で紹介したような手元が革巻きのものだけのようです。
加えて、日本の代理店が不在になってしまっている (?) などで、商品の取り寄せができなかったり、メーカー修理に対応できなかったりするようです。
オンラインの方を見ると、下のオンラインストアにて一本木の傘の取り扱いがありました。
ただし、傘布は保守的なものが多いようです。
Francesco Magliaの傘を狙うなら、やはりイタリア現地に赴く機会を狙って、ということになりそうです。
Mario Talarico
今回、一本木の傘について調べる中で、「Mario Talarico (マリオタラリコ)」というメーカーを知りました。
きっかけは、イタリアのネクタイブランド「E. Marinella」の輸入代理店による下のブログ記事でした。

ソレントレモンの木を使用した、イタリアらしさ溢れる傘ということのようです。
Mario TalaricoのWebサイトには、イギリスのロイヤルワラントの紋章が掲げられています。
調べてみると、チャールズ国王がMario Talaricoの傘を愛用しているという報がありました。

希少と思しき竹を使った一本木の傘で、20,000英ポンド以上の値段が付けられているものとのことです。
一本木の傘のラインナップ
Mario TalaricoのWebサイトでは、「Whole wood」の製品だけをフィルタすることで一本木の傘をリストアップできるようになっています。
上記のE. Marinellaのブログに登場したソレントレモンの傘のひとつが、下のものでしょうか。

また、チャールズ国王が使用しているものと似た、竹の一本木の傘もあるようです。
「Royal Edition」とあるのは、チャールズ国王が使用するものと似た仕様だからでしょうか。

使われている樹種もリストアップしてみました。Francesco Magliaとは少し異なる顔ぶれです。
Mario TalaricoのWebサイトはページによって英語表記があったりなかったりなので、中棒・手元の名称がイタリア語表記のものはイタリア語を示しています。
- サトウキビの根 (伊 Radice di canna da zucchero)
- ソレントレモン (伊 Limone di Sorrento)
- チェスナット (Chestnut、クリ、伊 Castagno)
- ニレ (伊 Olmo)
- バンブー (竹)
- ヒッコリー (Hickory)
- ヘーゼルウッド (Hazelwood、ハシバミ、伊 Nocciola)
- リンゴ (伊 Melo)
入手性
東京ミッドタウンのE. Marinellaの店舗に確認してみたところ、2023年2月現在もMario Talaricoの傘の取り扱いはあるようでした。
在庫は流動的で、梅雨時期になるとバリュエーションが増えるかも?とのことです。
ただし、中棒・手元素材はソレントレモンがメインのようです。
加えて、アフターアワーズのオンラインストアでも少量ながら在庫があるようです。
最後に
ここまで、イタリアの傘メーカーによる一本木の傘について紹介しました。
個人的な本命はFrancesco Magliaだったのですが、今回初めて知ることとなったMario Talaricoの傘も大変魅力的に感じます。
願わくば、現地の工房に足を運んでサンプルを拝見し、カスタム制作の注文をしてみたいなと思います。
次回は、イギリス発の一本木の傘について特集したいと思います。
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