当Webサイトでは、過去複数回にわたって私の長年の愛用品を紹介してきました。
今回はそれとは逆に、これは買って失敗だったな…… と後悔しているアイテムについて触れたいと思います。それがこちら。
7年と少々前に購入した、「江戸屋 (えどや)」の靴ブラシです。
「別誂 (べつあつらえ)」すなわち特注の意の焼印が光る逸品…… なのですが、今回はそんな失敗談を紹介したいと思います。
江戸屋による高級な手植えブラシ
靴手入れ以外のものも含めて、世に出回っているブラシの大半は専用の機械を用いて柄に毛が植え付けられています。一方で、こちらは職人が手作業で毛を植える手植えのものです。手植えと機械とで柄に毛束を固定する構造が異なり、手植えの方が遥かに毛が抜けにくいとされています。
一時期、ちょっと高級な靴ブラシが流行った (?) ことがあり、これらのブラシもそうしたタイミングで購入したものです。いずれも江戸屋の直営オンラインショップで購入しています。
3つとも、持ち手はブナ材のように見受けます。まずは、簡単にこの3つを紹介したいと思います。
向かって左 – 仕上げ用の山羊毛ブラシ
写真の向かって左にあるのが、鏡面磨きの仕上げなどに使う山羊毛のブラシ。3つの中で最も高価で、10,000円強で入手しました。最近は靴に鏡面磨きを施すことはあまりなく、一番高かった割に登場機会が少なくなってしまっています……。
たまたまかもしれませんが、3つのうち山羊毛のものだけ、持ち手の木目が板目となっています。
真ん中 – 磨き用の白豚毛ブラシ
真ん中にあるのは、靴クリームを馴染ませるための豚毛ブラシです。白い豚毛 (毛先は靴クリームの色に染まっていますが) は、黒いものよりもやや柔らか目なのだとか。3つの中では一番安く、6,000円強でした。
豚毛ブラシは靴クリームの色だけ揃える必要がありますが、所有しているのは1点のみ。この豚毛ブラシは、濃紺の靴クリーム用としています。他の色の靴クリームに対しては手植えでなく機械製の靴ブラシを使っているのですが、前述のように手植えと機械とで毛の抜けにくさが大きく異なります。
向かって右 – 埃払い用の花馬毛ブラシ
最後に、右にあるのは花馬毛ブラシとなっています。馬毛のブラシには「花馬毛」と「フリ毛」というものがあり、前者のほうが固めらしいです。価格は中間の8,000円台。
玄関に置いて、毎日のブラッシングに使っています。そのため、使用頻度が最も高いのはこの馬毛ブラシ。
おまけ – スウェード用のワイヤーブラシ
こちらは買って後悔、の対象ではないのですが、同じシリーズのワイヤーブラシ。燐青銅の毛が密に埋め込まれており、スウェードの靴の手入れに使っています。
このような形で、当時展開されていた江戸屋の手植え靴ブラシシリーズをひとしきり取り揃えたわけです。
握りにくい
前置きが長くなりましたが、何に後悔しているのか。
それは、ブラシとして使う上での握りにくさです。角型の持ち手が、とにかく手のひらにいい塩梅に収まりません。普通に握ると下の写真のようになるのでしょうが、力を加えにくいのです。
特に靴クリームを馴染ませるための豚毛ブラシは、少し力を掛けてブラッシングしたいところ。そこで、長辺方向を親指と小指で掴むように握ります。確かに力を加えやすくはなりますが、角が当たって手が痛く、長時間ブラッシングを続けるのは苦痛です。
実際に、この手のブラシは私が買い求めたもののように角型なのではなく、丸みを帯びた小判型のものが多い印象です。小判型の方が手のひらに馴染みやすそうですし、なぜ角型で展開したのか不思議なところ。
豚毛ブラシについては、江戸屋のものに加えて「DASCO (ダスコ)」のものも併用しています。DASCOの方は数百円程度の安価なものですが、握りやすさはこちらに軍配が上がります。ただし、前述のように、DASCOの方はブラシの毛がよく抜けるのが値段なりといったところでしょうか。
そんな不満を抱えた状態で、東京・日本橋大伝馬町の江戸屋の店舗を訪れたことがあります。角型ブラシの握りにくさについてコメントしたところ、実際に角型は人気が低く、発売から程なくして廃盤になったとのこと。やはりそうだったか。
最後に
今回は、私の過去の失敗した買い物に関するエピソードを紹介しました。
非常に使いにくいとはいえ、安くない買い物だったので渋々使い続けています。毎日のように使う馬毛ブラシについては、小判型のような握りやすいものに乗り換えてしまってもいいのかもしれません。
失敗した買い物については、ピスポークのスーツやコートだったり、アジアの靴職人に注文したMade-to-order (MTO) の靴だったりと枚挙に暇がありません。折を見て、他の失敗談についても語れればと思います。
まだ投稿本数は少ないですが、靴ブラシだけでなく洋服のハンガーやシューツリーなど、メンテナンス用品に関する記事を他にも公開しています。
そして、私は巷の靴クラスタ諸兄と比べると靴磨きに関するこだわりは薄い方ですが、国内外の靴職人に作っていただいたドレスシューズに関するエピソードが、当Webサイトのメインコンテンツのひとつとなっています。ご関心があれば、併せてご覧ください。
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