長沢ベルト工業のカスタムオーダーベルト

パンツの腰に巻くベルトは、靴と色を合わせるのが定石だとされています。

私もこのセオリーにできるだけ忠実であるようにしていますが、靴の色味に合ったベルトが必ずしも手元にあるとは限りません。特に色合わせに悩むのが下のドレスシューズ。

バーガンディ・オステリティブローグのオックスフォードシューズ
バーガンディ・オステリティブローグのオックスフォードシューズ

スモモのように鮮やかなバーガンディのこの靴と調和するベルトに、なかなか巡り会うことができていません。過去に紹介した下のベルトも色こそ近しいのですが、いざ装着してみると少し腰回りが派手かな…… と感じていました。また、テクスチャについても、型押しではなくスムースの方が靴との連続性が高まります。

Giorgio Zoniによるバーガンディの型押しベルト
〈Giorgio Zoni (ジョルジオゾーニ)〉によるバーガンディの型押しベルト。バックルを交換している
バーガンディのドレスシューズとベルト
Giorgio Zoniのベルトとバーガンディのドレスシューズ。少しベルトが派手かなという気が

そうしたなか、ちょうど隙間を埋めるようなベルトを手中に収めることができました。

長沢ベルト工業によるバーガンディのボックスカーフを使用したドレスベルト
長沢ベルト工業によるバーガンディのボックスカーフを使用したドレスベルト

東京・葛飾のベルトメーカー〈長沢ベルト工業〉に製作を依頼した、Made-to-order (MTO) のベルトです。

有限会社 長沢ベルト工業 オフィシャルサイト | 長沢ベルト工業のオフィシャルサイトです
国産にこだわり、紳士ベルトとしての最高の製品作りを行っております。 皮革ごとの特徴を生かすデザインを考え製品企画を行い、たとえ効率は落ちても昔ながらの伝統製法を守り続ける事により、高品質な製品をご提供しております。

今回は、こちらのベルトを紹介したいと思います。

オーダーのきっかけといきさつ

都内に居を構える長沢ベルト工業というメーカーがベルトのカスタムオーダープログラムを設けていることについては、以前からSNSを通じて認知していました。

注文靴の納品ラッシュと新しいベルトのニーズ

機会があったら何か製作をお願いしたいなと考えていたのですが、重い腰を上げるきっかけに恵まれず。そんな中、ここ最近ドレスシューズの納品が相次ぎ、各々に合わせるベルトの必要性に迫られます。そのうち一部は、過去に本Webサイトで紹介したものです。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル
〈Ryo Izumisawa Handmade Shoes〉によるドレスシューズ仕立てのサンダル
Yearn Shoemakerによるスウェードのレイジーマン。Artisanal Lineの仕立てとなっている
〈Yearn Shoemaker〉によるスウェードのレイジーマン

既製品のベルトは、どうしてもバックルが銀色の金具のものばかりです。こちらでコメントしたような既成ベルトのバックル交換も視野に入れつつ、近場の洋品店に探しに赴いたのですが、ちょうどいいものが見つからず。

長沢ベルト工業の工場に訪問

そこで、長沢ベルト工業のWebサイトからカスタムオーダーに関する問合せを実施。詳しいお話をお聞かせいただけたり、MTOの注文をお受けいただけるとのことだったので、訪問の約束をさせていただき、京成本線の堀切菖蒲園駅から徒歩5分ほどの住宅街にある同社の工場に伺うこととしました。

長沢ベルト工業の本社工場
長沢ベルト工業の本社工場

前述のとおり、当初の目当ては新しい靴、および納品待ちの靴に合うベルトを作ることでした。しかし、残念ながら同社で在庫している革の中で丁度いいものが見つからず。代わりに目に留まったのが、今回オーダーすることとなったバーガンディのボックスカーフでした。

今回ご案内していただいたのは、実際にベルトの製作に携わる職人の方。丁寧にご説明いただきながら、仕様を決めていきました。その詳細は、届いたベルトの細部とともに紹介したいと思います。

なお、掲載の許可などを伺い損ねてしまったため、工房で伺ったベルト仕様以外の話などは言及を控えさせていただくことにしました。

届いたベルト

さて、ここから完成したベルトを紹介します。

表面の革と縁のステッチ

まずは、ベルト全体の表情を左右する、表面の素材とステッチから。

バーガンディのボックスカーフと書きましたが、具体的にはフランスの〈Tannerie d’Annonay (アノネイ)〉のセミアニリンカーフ〈Vocalou (ボカルー)〉です。

Tannerie d’AnnonayのVocalouを使ったベルト
Tannerie d’AnnonayのVocalouを使ったベルト

前述のとおり、靴と色味が近しいことが選んだ決め手なのですが、並べてみるとこのとおり。ベルトの方が若干暗いトーンですが、冒頭で紹介したGiorgio Zoniのベルトが明るくて派手、という問題の解決にはなっているかと。

バーガンディの靴とベルト
バーガンディの靴とベルト

ベルト両縁のステッチは無しとしていただきました。ミニマルな見た目が私の好みなのですが、耐久性はステッチありのものに劣るようです。

バックルと帯幅

バックルは、多くのストックから選ばせていただくことができます。

しかしながら、こと金色のものとなると選択肢は限られてしまいます。その一方で、東京・蔵前の金具街で仕入れておいた金色のバックルが私の手元にあったので、そのひとつを使っていただくことにしました。

バーガンディのベルトと金色のバックル
持ち込んだ金メッキのバックル

冒頭のGiorgio Zoniのベルトと同様、華奢なボディのバックルを使っていただきました。ツヤ出しの金色ですが、そこまで目立たないのがいいところです。

なお、バックルを探しに金具街に赴いた際のいきさつは、下の記事をご覧ください。

バックルとサル革を固定するためのステッチは、縁を4箇所縫い止める手法を採っていただいています。

バックルとサル革を留めるステッチ
バックルとサル革を留めるステッチ

革の議論に戻りますが、Vocalouはどちらかというと銀擦りやお化粧をあまりしていない革です。上の写真からも垣間見えるとおり、全体的に血筋が目につきます。完成したベルトを最初に手に取った時に、ドレスベルトに血筋が浮いているのは珍しいな、と感じたのですが、それは私が今回初めてスムースのアニリンカーフ・セミアニリンカーフのベルトを入手したからだ、ということに気づきました。ベルトといえば、これまで型押しの牛革やワニ革などのエキゾチックレザーのものばかり手に取ってきたのですが、ようやくオーソドックスなボックスカーフのベルトを手にすることとなりました。

帯幅は、ドレスベルトにおいて標準的な30 mmを選択しています。もちろん、上のバックルも30 mmの帯幅用のものです。加えて、サル革の幅も指定することができましたが、ここは標準的な12 mmとしました。

穴の数と剣先の形状

言うまでもなく、穴の数や位置も指定できます。

ひとつ、とするのも潔いかなと思いましたが、少し日和って2.5 cm間隔で3つとしていただきました。

ベルトに穿たれた3つの穴
ベルトに穿たれた3つの穴

ベルトの穴の中のコバには色が塗られていません。注文時に特に尋ねられることもなかったので、穴のコバは基本的に塗らない仕様なのかもしれません。

上の写真の端にも見えるベルトの剣先ですが、こちらの形状も指定可能です。こちらはハート型と呼ばれていたものです。

裏面の革とコバの色

裏面の革も、いくつかの選択肢の中から選ぶことができました。

私は銀擦りしたヌメ革の質感が好きなので、こちらを選択。中央には長沢ベルト工業の刻印があります。

銀擦りヌメ革を使ったベルトの裏面
銀擦りヌメ革を使ったベルトの裏面

上の写真でうっすら見えているコバの色もオーダー可能で、今回は黒としています。

最後に

今回は、新しく届いたカスタムオーダーベルトを紹介しました。

件のバーガンディのドレスシューズですが、もう少し涼しくなったら出番が回ってきそうなところです。その前に、いい感じでペアリングできるベルトが入手できてよかったです。

バーガンディの靴とベルト
バーガンディの靴とベルト

ベルトに対する目利きは得意とするところではありませんが、全体的に端正に作られている印象です。長沢ベルト工業から参考価格などは開示されていないので、今回のベルトの制作費なども明言を避けておこうと考えていますが、セレクトショップや百貨店で見かけるイタリアメーカーのMTOベルトと比較すると格安です。

長沢ベルト工業によるバーガンディのボックスカーフを使用したドレスベルト

上で言及したような既成ベルトのバックル交換も手頃で便利なアプローチですが、何かいい革がストックされることがあれば、再度長沢ベルト工業にベルト製作の依頼を進めたいと思います。


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Authored by
Navy Circle

サルトリアル・クラフツマンシップを中心としたクラシックファッションを追いかけるY世代。Respecting the long-lasting classics and craftsmanship

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