ゆく年2023年。私のベストバイ – ドレスウェア部門

2023年も、まもなく終わりを迎えようとしています。

今年は、パンデミックに端を欲した過去3年の自粛ムードの殻を破り、世の中がパンデミック前の勢いを取り戻さんとした年。改めて、人間社会のレジリエンスとはいかほどのものか、ということを再認識した1年でもありました。

主にドレスファッションを中軸とした話題をお届けする当Webサイトですが、今回は2023年の「ベストバイ」をご紹介しようと思います。実のところ、当サイトを立ち上げた当初は「ベストバイみたいな俗っぽい、商業主義の塊みたいなことは絶対にやるまい」と斜に構えていた私。一方で、いつも拝見しているブログでベストバイの記事があったら興味深く読んでいますし、契約しているKindle Unlimitedでモノ系雑誌のベストバイ号があれば欠かさず読んでいるのが実態です。

そうしたことから、年末年始の暇を過ごすうえでの読み物として楽しんでいただけたら、という思いで、2回に分けて今年のベストバイアイテムを紹介させていただくことにしました。私は文章を書くのは上手くないので、果たして余興になるのか心細い限りですが、どうぞお付き合いください。

ベストバイ選定のクライテリア

年末に駆け込みでやってきたアイテムは評価が難しいことから、今年11月末時点で手元にあるモノを対象とすることにします。同時に、起点は昨年2022年の12月1日とします。また、注文して仕立てたり取り寄せたりした品は、注文ではなく到着のタイミングが上記のウィンドウに収まっていることを条件としました。

また、今年入手したモノの総合ランキングを紹介するのではなく、当サイトでよく取り上げるトピックに沿って部門を設定し、それぞれのベストを選んでみることにしました。

  • ドレスウェア部門
  • ドレスシューズ部門
  • カジュアルウェア部門
  • ファッションアクセサリー部門
  • その他ガジェット類・雑貨部門

今回は、そのうちドレスウェアについて取り上げたいと思います。

ドレスウェア部門

当サイト設立時の思いは、ドレスウェア、とくにサルトリアルの流れを汲むドレスウェアに関する考えや体験をナラティブとして発信することを主眼したものでした。しかしながら、私の関心があちらこちらに移ってしまい、あまりドレスウェアの紹介ができていないのは不徳のいたすところです。

「ドレスウェア」関連の記事一覧
手縫いの洋服を中心に、スーツやジャケット、トラウザーズなどのドレスウェアに関するレビューやエピソードを公開しています。

さて、今年は11月末時点で、スーツ1着、ジャケット2着、トラウザーズ2着が仕立てられています。今年は、例年よりもかなり多く服を誂えました。トラウザーズを中心に既製品も購入はしたのですが、エントリーは上の注文服5つとすることにしました (こういったベストバイ特集は、一般的には既製品を対象に行うものかもしれませんが……)。

既に記事を書いて紹介した2つを先に、次いで記事になっていない3つを挙げていきましょう。

エントリー1: ウールモヘア・フレスコのトラウザーズ

1点目は、下の記事で紹介しているウールモヘアのトラウザーズ。

ウールモヘアのフレスコで仕立てたトラウザーズ。エントリー3のジャケットと合わせて
ウールモヘアのフレスコで仕立てたトラウザーズ。エントリー3のジャケットと合わせて

かつて英国にあった「Boobros (ブーブロス)」という生地メーカーによるハイツイストの平織り生地 (フレスコやポーラーと呼ばれる類) で仕立てた一着です。

エントリー2: 紺ブレ

2点目は、今秋仕上がったばかりのネイビーのブレザージャケット。

金ボタン・ウールサージのネイブーブレザージャケット
金ボタン・ウールサージのネイブーブレザージャケット

個人的に、割と王道的な仕上がりのブレザーを作ったつもりですが、一部詰めの甘いところがあった一着でもあります。

エントリー3: ウールモヘア・フレスコのジャケット

エントリー1の、ウールモヘアのトラウザーズの写真。そこに写っているジャケットも、今年誂えた一着です。こちらは英国のミル「William Halstead (ウィリアムハルステッド)」のウールモヘアで、トラウザーズと同様に3 x 3 plyのフレスコとなっています。織元は違えど、トラウザーズと非常に似通った生地感で、組のジャケパンとして使い勝手がよいものとなっています。

William Halsteadによるウールモヘアのフレスコで仕立てた春夏物ジャケット
William Halsteadによるウールモヘアのフレスコで仕立てた春夏物ジャケット

こちらも記事にしようかと考えたのですが、良くも悪くも特徴のないジャケットであり、ストーリーとしての面白みをどこに見出すかを悩んだ挙句、書き物ができていないという次第です。もちろん、服としてはこの上なく素晴らしいものなのですが、キャラクターが薄くネタにしづらいのが難点 (?)。実は、このジャケットを仕立てる際、半ばオマケの形で作ったのが前述のトラウザーズであり、当初の位置付けはジャケットが主、トラウザーズが従、といった様相だったのですが。

エントリー4: ウール・キャバルリーツイルのトラウザーズ

トラウザーズはもう一着、キャバルリーツイルで仕立てていただいたものがあります。英国の「William Bill (ウィリアムビル)」によるウールのキャバルリーツイルで、目付は600 g/mとスーパーヘビー級。

キャバルリーツイルのトラウザーズ。カシミヤフランネルのジャケット、バーガンディのオックスフォードシューズとともに
キャバルリーツイルのトラウザーズ。カシミヤフランネルのジャケット、バーガンディのオックスフォードシューズとともに

こちらもとてもいいトラウザーズで、来年の早い時点でご紹介できればと考えています。

エントリー5: エスコリアルウール・サキソニーのスーツ

スーツについては、今年の初頭にエスコリアルウールで織られたサキソニーの三つ揃えを納品いただきました。

ただ、最近スーツを着る機会がめっきり減ってしまっており、まだ3度ほどしか着る機会が得られていません。そのため、残念ながら評価には時期尚早。エントリーはしますが、ファイナリストには選ばれることはありません。エスコリアルウール原毛のクリンプがもたらすナチュラルストレッチによって、着心地はこの上なくいいのですが。

エスコリアルウールのサキソニー生地で誂えた三つ揃え
エスコリアルウールのサキソニー生地で誂えた三つ揃え

ドレスウェア部門のベストバイは……

今年仕立てたドレスウェアのナンバーワンは、エントリー1: ウールモヘア・フレスコのトラウザーズにしたいと思います。今年一番の大物は間違いなくエスコリアルのスーツなのですが、結果としてベストバイはこのトラウザーズと相成りました。

選定理由は以下のとおりです。

出番の多さ

まずは、1年を通して本当に多く活躍してくれたこと。これまで、私は夏場のトラウザーズについてはトロピカルやシアサッカーばかり選んでいました。そんな中、今更ながら、このトラウザーズを通じてフレスコの良さを理解することができたのです。

目付350-400 g/mと推定される、春夏にしては重めの生地。しかしながら、意外と暑くないのです (さすがに夏真っ盛りには履きませんが……)。これは、フレスコの孔の多い組織がもたらす恩恵なのでしょうか。一方で、秋冬もそれなりにイケます。上衣との生地感のミスマッチさえなければ、11月下旬ぐらいまでは活躍してくれる懐の深さがあります。

ざっくりとしたニットポロと合わせて
ざっくりとしたニットポロと合わせて

なお、このトラウザーズは今年の上半期にワードローブに加わったのに対し、紺ブレやキャバルリーツイルは今年下半期の納品でした。今年入手したばかりモノの比較において出番の多さを基準にするのは、若干アンフェアではありますが。

シルエットの美しさ

仕立てもさることながら、目付があり、かつパリッとした生地なので、シルエットが綺麗に出ます。
加えて、センタークリースもしっかりと入るので、品がよく見えます。この辺りも、これまでの春夏のトラウザーズでは妥協していたポイントでした。

キャバルリーツイルのトラウザーズも、シルエットが綺麗に出やすいというのは共通です。

独特の生地の風合い

本品の紹介記事にも書いたように、このトラウザーズには色糸が織りなす独特の表情があります。こちらも、個人的にとても気に入っているポイントです。

前立て付近。色糸による杢っぽい表情が特徴的
前立て付近。色糸による杢っぽい表情が特徴的

最後に

今回は、私が2023年に入手したドレスウェアのベストバイを紹介しました。

2023年12月現在、スーツ1着、トラウザーズ2着が納品に向けたパイプラインにあります。ワードローブの戦力はある程度充実してきたので、来年は今年ほどに多くの注文服を作ることはないだろうと見据えますが、果たして……。

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