急に冷え込んできた昨今。ニットウェアが活躍する季節がやってきました。
そんなニットウェアが大車輪の活躍を見せていた昨年の冬に、ニットウェアが原因でとあるトラブルに見舞われてしまいました。今回は、それを解決すべく導入したインナーウェア (肌着) を紹介したいと思います。
ハイネックのニットウェアと肌トラブル
ところで、前回の記事では、〈土井縫工所〉による形態安定生地を使用したドレスシャツを紹介しました。
ジャケットなどのインナーに活躍するハイネックのニットウェア
しかしながら、私はジャケットやブルゾン、スーツなどのインナーにドレスシャツを合わせることはあまり多くありません。秋冬シーズンに関して言えば、セーターやウールのニットポロシャツを着るのが大半。なかでも、タートルネックやモックネックのニットばかり選んで着ています。首が詰まっているので、クルーネックなどと比べてかっちり感が出ることと、洗うのが大変なジャケットやブルゾンの首元が直接肌に触れず衛生的なことにメリットを見出しています。
例えば、カシミヤ100%・12ゲージのテラコッタ色のタートルネックのもの。
下の記事にて、主題ではないものの少しだけ引き合いに出しています。
ついでに言うと、合わせたジャケットについても下の記事で紹介しています。
または、カシミヤに迫る繊度であるスーパー140’sのウーステッドを使い、30ゲージと非常に細かく編まれたもの。こちらは黒・白・バーガンディの3つを色ち買いして活用しています。
こちらも、下の記事でほんの少しだけ触れています。
突然、首元が痒くなるように
このように、毎年ハイネックのセーターを愛用しているのですが、昨年になって突然こうしたニットウェアを着ると痒くなったり、発疹が出るようになってしまいました。ニットの下には主にクルーネックやVネックの絹のインナーを着ていたのですが、インナーでカバーされていない首周りにそうした問題が生じたのです。こうした反応は化学繊維のセーターに対して発生することが多いと聞きますが、私が症状に悩まされたのは、上で紹介したようなカシミヤや細い原毛のウールで編まれたものでした。
ニットウェアの繊維が直接肌に触れていることが問題だろうということで、これまでのクルーネック・Vネックではなく、首元まで覆えるハイネックのインナーを探していたところ、今回のアイテムに辿り着いたという次第です。
クオーレ・アモーレの低刺激インナーウェア
それが、〈クオーレ・アモーレ〉というメーカーのインナーウェアです。私は、今回のトラブルを通じて初めてクオーレ・アモーレを知ったのですが、アトピー性皮膚炎など肌にトラブルを抱える方、および皮膚科医の間で評判の国内メーカーのようです。
選んだのは、〈綿100%長袖タートルサポートインナー〉という名称の商品。上記の趣旨に沿った、タートルネックのインナーウェアとなっています。
特殊加工による低刺激の綿繊維
クオーレ・アモーレのインナーウェアの特徴は、特殊な加工が施された綿素材である〈BioMedical Knit (BMK) 超低刺激コットン〉で作られていること。商品に添付されていたチラシには、綿繊維に特殊なコーティング加工が施されていることが示されています。
Webで検索すると、本素材の開発・臨床試験を共同で実施した研究機関による文献が見つかりました。この素材に関する説明が興味深かったので、下に引用しています。肌に触れる繊維を、肌の細胞膜と同様の成分でコーティングするというのは興味深いアプローチ。
BMK素材繊維製品((株)クオーレ・アモーレ)は,人間の細胞膜とほとんど同じ成分素材であるリン脂質ポリマーを綿素材にコーティングしたものである.これらの製品(衣類)は肌への刺激を低くする効果と共に,体内からの水分等が失われることを防ぐバリア機能の回復効果,伸縮性などを併せもつと考えられている.
中澤有里 他、易被刺激性皮膚疾患に対するBiomedical Material Knit(BMK)素材繊維製品の有用性の検討、アレルギー、2007、Vol. 56 抄録より
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/56/3-4/56_KJ00004689878/_article/-char/ja/
開封前に肌との相性チェックができるサンプル
もうひとつ面白いと感じた試みが、着用前に生地と肌との相性を試せるサンプルが付属していたこと。
肌が敏感な方向けに作られた商品ということもあり、個々の肌との相性チェックは重要です。そうしたこともあってか、商品の開封・着用前にそうした相性を確認するための端切れが、商品パッケージとは別で準備されています。そのため、商品は開封せずにサンプルだけを試し、それでも肌に合わなければ返品できる仕組みとなっているようです。
下の写真のように、このサンプルは腕に巻いて様子を見ることができます。念のため私も試してみましたが、何も肌トラブルは起きませんでした。
インナーウェア本体の様子
最後に、入手したインナーウェア本体について触れたいと思います。
今回、サイズは商品Webページの寸法を参考にしつつも、適当に選びました。フライス編みなのでよく伸びるため、多少小さ目のものを選んだとしても問題はなさそうな印象です。ピタッとした着用感を好むか否かにもよるのですが、大きめ・小さめで迷ったら小さめを選ぶと吉かもしれません。
一般的なカットソーとは逆に、縫い代は表側 (肌に触れない側) に現れるようになっており、肌への刺激を減らす作りとなっています。
もしかすると、薄手のニットウェアなら、重ね着したときにこうした縫い目が表に響いてしまうかもしれません。昨年はそこまで細かくチェックできなかったので、今年確認してみようと思います。
首元は切りっぱなしで仕上がっており、長すぎる場合はハサミで切って長さを調節しろとの説明でした。あまりにも長いと、インナーの首元が上に来たニットウェアから覗いてしまい不格好ですが、それよりもニットが直接肌に触れないことを重視したい私の場合、オリジナルの長さのままで着用することにしました。インナーが首からはみ出ていないかは、こまめに確認することで対処することとしています。
最後に
今回は、ニットウェアのお供として役立ちそうな、低刺激素材のインナーウェアを紹介しました。
肝心の効用についてですが、このインナーウェアの上にハイネックのニットを着ることで、冒頭のような肌トラブルは大きく改善されました。色違いには白 (腕に巻いたサンプルの色) があるのですが、昨年のうちに色違いや洗い替えも購入を済ませています。洗濯を繰り返した後に大事なコーティングがどうなるのか気になるところですが、仮にコーティングがなかったとしても綿100%なので依然肌に優しい部類のものと言えるでしょう。
〈ユニクロ〉の大ヒット商品〈ヒートテック〉に代表されるように、近年は化繊の機能性肌着がもてはやされるようになりました。しかし、その一方で、化繊による肌トラブルが原因で皮膚科を受診するケースが増えており、一部では「ヒートテック症候群」と呼ばれるようになっていると聞きます。
今回紹介したクオーレ・アモーレのインナーウェアには発熱などの機能はありませんが、素材・縫製の両面から肌への負荷を抑えたつくりとなっています。こうした選択肢も、もっと注目されるようになってもいいのかもしれません。
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