もう10年以上前のこととなりますが、私はスウェーデンの「ハルムスタッド (Halmstad、ハルムスタードとも)」という小さな街に住んでいました。
南北に伸びるスウェーデンの西海岸に位置しており、スウェーデン第二の都市であるヨーテボリ (Göteborg) から少し南に下った場所です。
少し趣向を変えて、今回はこのハルムスタッドについて紹介したいと思います。
ハルムスタッドについて書き記すきっかけ
はじめに、ハルムスタッドに関する記事を書こうと考えたいきさつについて。
卓球の世界大会
近年、国際大会における卓球の日本代表選手の躍進が報じられたことが少なくありません。そうしたことから最近の動向をググって調べていたところ下の記事に辿り着き、遡ること5年前の2018年に卓球の世界大会がハルムスタッドで開催されていたことを知りました。
あんな田舎町で…… というのが第一印象でしたが、この記事によると、ハルムスタッドが大会を誘致した経緯もかなり特殊なものであったようです。
ハルムスタッドに関する日本語の情報
世界大会の開催を契機に、卓球界隈ではハルムスタッドの注目度が高まったのかもしれません。しかしながら、非常にマイナーな都市ということもあり、ハルムスタッドに関する日本語の情報はWikipediaの記事程度しかありません。
もしかすると、またひょんなことから日本でハルムスタッドが注目される日が来るかも知れない…… という思いから、10年以上前の記憶を頼りに彼の地のことを書き記すことにしました。
ハルムスタッドの基本情報
ハルムスタッドは、人口が10万人にも満たない小さな自治体です。
スウェーデンの地方自治のシステムには、日本でいうところの都道府県にあたるランドスカープ (Landskap) があり、その下に市町村に相当するコミューン (Kommun) があります。ハルムスタッドというコミューンは、ハッランド (Halland) というランドスカープに属する自治体です。
(コミューンの下にさらにセントラロート (Centralort) という区域があったりしますが、この辺りは割愛)
ハルムスタッドに何か特筆して有名なものがあるかというと、少なくとも私が住んでいた当時は海外からも人を惹きつけるようなものはありませんでした。一方で、スウェーデン国内では、夏のバカンスの目的地として名を馳せています。
海沿いには長くて波の穏やかなビーチがあり、こちらもシーズン中は人でごった返していました。
ビーチだけでなく、とても自然が豊かな場所で、トレッキングルートやサイクリングコースも整備されています。この辺りは、今後気が向いた際にスポットを挙げてみたいと思います。
ところで、自動車メーカーのVolvo (ボルボ) やファストファッションのH&M、航空機メーカーのSaab (サーブ)、通信機器メーカーのEricsson (エリクソン) など、スウェーデンの発の有名なグローバル企業は意外と多くあるものです。しかしながら、ハルムスタッドには当時そうした大企業のオフィスなどはありませんでした。もし、今も同様の状況だとすると、出張や海外赴任で日本人が住まうケースは多くはないのかもしれません。
一方、市内にはハルムスタッド大学 (Halmstads Högskolan) という総合大学があります。もしかすると、交換留学協定を結んでいる日本の大学もあるのかもしれませんが、在住当時の私は日本から留学されている方と交流を持つことはできませんでした。フランスやスペインなど、他のヨーロッパからの交換留学生と交流する機会は多くあったのですが、彼らから日本人留学生の存在が仄めかされることはありませんでした。
ハルムスタッドへの交通アクセス
ハルムスタッドへ足を伸ばされる変わったご縁をお持ちの方のために、交通アクセスについて触れておこうと思います。
航空アクセス
ハルムスタッドには、市内に小さな公営の空港があります。しかし、私の住んでいた当時から、定期便は首都のストックホルムとを結ぶ便のみです。加えて、国際線が就航するストックホルム (Stockholm) のアーランダ空港 (Stockholm-Arlanda flygplats) ではなく、ブロンマ空港 (Stockholm-Bromma flygplats) という小さな空港とを結ぶものです。そのため、ストックホルム経由で空路でアクセスする場合、アーランダ空港まで飛んで、陸路でブロンマ空港に移動し、ハルムスタッドへ向かうようなルート取りになるのでしょうか。
鉄道アクセス
上記のような使い勝手の悪さから、私はハルムスタッドの空港を使用したことはなく、都市間移動はもっぱら鉄道を利用していました。ハルムスタッドにはスウェーデン国鉄 (SJ) の駅があり、少し時間は掛かるものの陸路で各地にアクセスできます。
隣接する主要都市を挙げるとすれば、ヨーテボリまで約1時間、隣国デンマークのコペンハーゲンまで2時間半のアクセスです。
出典: トーマスクック・ヨーロッパ鉄道時刻表 ’09夏・秋号、株式会社ダイヤモンド社、2009年、ページ733
私はハルムスタッドから遠出する際は、ヨーテボリかコペンハーゲンまで電車で向かい、そこから空路を利用することが大半でした。特に、コペンハーゲン空港にはハルムスタッドから鉄道で乗り換えなく直接アクセスできるため、電車に乗る時間こそ長いものの比較的楽に移動できます。現在、日本からストックホルムへの直行便は就航していないようなので、ハルムスタッドへ訪れるとすれば、コペンハーゲンまで飛び、そこから鉄道を使用するのがいいかもしれません。
当時は同じ西海岸のマルメ (Malmö) やルンド (Lund) に友人がおり、私は鉄道は頻繁に利用していました。
なお、自動車は自分で運転することがなかったため、コメントを差し控えることにします。地元の方々は、片道3時間近く運転して酒税の安いデンマークに赴き、お酒をしこたま買い込んで帰ってくる話をよく聞いたのが印象的です。
ハルムスタッドの中心街の様子
ハルムスタッドの中心街の様子を、ハイライトで紹介しようと思います。
ハルムスタッドは、ニッサン (Nissan) という川の河口に位置しており、川の両岸に街が広がっています。
ニッサン川右岸 (西側) の街並み
街の中心は右岸 (川の西側) にあり、Stora torg (直訳すると「大広場」) という広場を中心に街が形成されています。広場や教会を中心に街が広がるのは、欧州の他の街並みと同様です。
中心街も、冬場は日が暮れると人通りがなくなります。少なくとも当時は、一人で散策していても身の危険を全く感じないほどに治安も良好でした。高緯度の北欧ということもあり、夏至の頃は午後11時を回っても薄明るく、夜遅くでも賑わいが残っていました。
Stora torg周辺の街並みの特徴は、デンマークの影響を受けた意匠・様式の建物が多いこと。ハッランド、およびそれより南のスコーネ (Skåne) 地方は、デンマークの領土であった歴史を持っており、デンマークやドイツ北部を彷彿とさせる建物が点在しています。
一方、例えばストックホルムの旧市街であるガムラスタン (Gamla Stan) では、こうした建物を目にすることはありません。
ニッサン川の右岸にて、Stora torgから川下に進んだあたりにHalmstads Slottという城がありますが、これはデンマーク統治時代に建てられたもの。
Stora torgを中心に、ショッピングストリートが伸びています。
ニッサン川左岸 (東側) の街並み
ニッサン川の左岸は右岸よりも後から開発されたのか、比較的新しい建物が多いです。上で言及したハルムスタッド中心駅も、左岸にあります。
近年のハルムスタッドの顔ともなっているのが、2005年に竣工したハルムスタッド市立図書館 (Halmstads stadsbibliotek) です。
ウォーターフロントに建つ、とてもエレガントな図書館。遅い時間には、ライトアップされていて綺麗です。
ストックホルムやコペンハーゲンの図書館も非常に印象的な建物ですが、北欧、もしくは欧州は図書館の建築に力を入れる文化があるのでしょうか。
最後に
今回はひょんな思いつきから、昔の日記や記憶を頼りにスウェーデンの田舎町に関する雑記を紹介することにしました。卓球の国際大会のように、何か思いもよらぬところから再びハルムスタッドの注目が高まることがあればいいのですが。
ハルムスタッドについて紹介したいことはたくさんあるのですが、元々の本サイトの主旨と逸れるため、服飾について書くネタが無くなった時に再訪したいと思います。
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