アメリカ大陸横断の旅 (5) 大陸再横断編

過去1ヶ月近く続けてきたアメリカ大陸横断の旅も、ようやく今回で最後とさせていただこうと思います。

米国西海岸に降り立ち……

中西部の都市シカゴ (Chicago) を経由しつつ、東海岸に至る鉄道での長旅を経験し……

東海岸の「北東回廊」を突き進み……

そして今回は、下の図でいうところの行程9・行程10・行程11について触れていきます。東海岸からふたたび西海岸へと、北米大陸を再横断します。

北米大陸横断鉄道旅行の行程
北米大陸横断鉄道旅行の行程

行程9 – ナイアガラフォールズ (米) → シカゴ (1車中泊)

前回の行程8で訪れたナイアガラフォールズ (Niagara Falls)。

ナイアガラフォールズにて

グランドキャニオン国立公園 (Grand Canyon National Park) に続き、当地でも雄大な自然を堪能します。

川辺から見たナイアガラの滝
川辺から滝を見上げる
虹が掛かるナイアガラの滝
虹が掛かるナイアガラの滝

ナイアガラフォールズは、カジノを中心に日没後のエンターテイメントも豊富な街となっています。

夜のクリフトンヒル (Clifton Hill)
夜のクリフトンヒル (Clifton Hill)
虹色にライトアップされたナイアガラの滝
虹色にライトアップされた瀑布
ナイアガラフォールズのカジノのパンフレット
カジノのパンフレット
カナダのバーにて。地元のビール
大っぴらに酒が飲めるのもカナダの魅力

ナイアガラフォールズでの食事といえば、個人的に印象深かったのがユースホステルのスタッフの薦めで訪れた地元のダイナー。地元の方が多い印象でしたが、観光客然の私を暖かく迎えてくださったのが嬉しかったです。洋ドラの影響でこうしたダイナーに憧れがあったのですが、旅の終盤でようやく体験することができました。

ナイアガラフォールズのダイナー「Simon's Restaurant」
ユースホステルのスタッフに教えてもらった地元密着なダイナー「Simon’s Restaurant」
Simon’s, beloved Niagara Falls diner, closes up as owners retire
Closure the end of an era say patrons, as 82-year-old Pat Simon and 77-year-old Rosa Simon retire.Simon’s Restaurant, a ...

救いの手?

街外れにあるButterfly Conservatory (蝶観察館) なる場所にも行ってみたのですが、いざダウンタウンに帰ろうとすると既にバスの最終便が過ぎ去った後。流しのタクシーが走っている気配もありません。手元に地図もなく、当時はスマートフォンでGoogleマップが見られるわけでもないので、街中までどれだけ距離があるのかもわかりませんし、歩いて戻れる距離なのかも不明。

Butterfly Conservatory | Niagara Falls
Located at Botanical Gardens, the Butterfly Conservatory is home to over 2000 butterflies. (Butterfly Conservatory Niaga...
温室の中でさまざまな蝶が放し飼いになっている
温室の中でさまざまな蝶が放し飼いになっている蝶観察館

途方に暮れて歩いていたら、通りすがりの車が街まで乗せてあげると声を掛けてきます。後から考えると、ホイホイ着いていくのは非常に危険だったのですが、ヘラヘラと乗せていってもらうことにしました。結果、危険な目には遭わなかったのですが、車内で某新興宗教の熱烈な勧誘を受ける羽目に。「ワタシブディストだからネ、グヘヘ」みたいな適当なこと言ってあしらいましたが、感謝の念に堪えません。

とある新興宗教のリーフレット
とある新興宗教のリーフレット。ダウンタウンに向かう車内で熱烈な勧誘を受けた

こんな感じで、後から思い返すと道中アレは危なかった、判断が甘かったという場面は山ほど思い返されます。無事に帰ってこれたのはひとつの幸運だったのかもしれません。

アメリカ側から鉄道に乗車

さて、今回はカナダ側のナイアガラフォールズに滞在していたのですが、鉄道には米国側の駅から乗車することにしました。その理由は失念してしまったのですが、確かUSA Rail Passの制限の兼ね合い、もしくは米国への入国審査の所要時間の関係 (鉄道で入国すると時間が掛かる?) のようなものでした。

そこで、カナダ側から歩いて米国側に渡ります。両国を隔てる川に架かるRainbow Bridge (レインボー橋) を渡った先で入国審査を行います。Amtrakの駅は検問所から少し離れた場所にあるので、タクシーで移動。

夕暮れのRainbow Bridgeと米国側の検問所
夕暮れのRainbow Bridgeと米国側の検問所 (実際に通過したのは午前中)

乗り換えで訪れたユーティカ (Utica)

ここから再びシカゴ (Chicago) を訪れるのですが、ナイアガラフォールズとシカゴの間に直通便はありません。そこで、ニューヨークからナイアガラフォールズに訪れる際に利用した「Maple Leaf」で少しニューヨーク (NewYork) 側に戻り、五大湖に沿ってシカゴに向かう「Lake Shore Limited」に乗り換えます。

鉄道の乗車時間を短くするなら、バッファロー (Buffalo) という街で乗り継ぐのが合理的。しかしながら、Lake Shore Limitedがバッファローに到着するのは午後11時過ぎ。夜遅くにAmtrakの駅に滞在するのは少し心細く感じたので、もっとニューヨーク側に進んだところにある「ユーティカ (Utica)」での乗り換えとしました。鉄道に乗っている時間は長くなりますが、安全を期しての判断です。

Maple LeafからLake Shore Limitedへの乗り換え
Maple LeafからLake Shore Limitedへの乗り換え

Amtrakの駅は、ユーティカのダウンタウンにあります。ユーティカのダウンタウンはちょっと寂れた印象。Wikipediaによると、昔は工業都市であったものの、相次ぐ工場の海外移転の結果、衰退が問題となっているようです。今回は賑やかな大都市ばかり訪れていたので、アメリカの違う一面を見たような気持ちになります。

ユーティカ駅の周辺
ユーティカの駅周辺。雑草が覆い茂っている

車は走っていますが、駅近くのエリアには不思議なほどに人気 (ひとけ) がありません。郊外の街なので車社会ということもあろうかとは思いますが、一抹のゴーストタウンみを覚えます。

ユーティカの人気のない広場
人気 (ひとけ) のない広場
ユーティカのとある通りの歩道
道路もあまり整備されておらず、歩道は雑草だらけ。人も歩いていない
ユーティカのSt. John's Catholic Church
St. John’s Catholic Church。地元のカトリック教会

乗り継ぎの待ち時間は4時間ほどあったのですが、こんな調子の街なので、1時間ほど散策したのち早々に駅に戻ってきてしまいました。駅舎の前で時間を潰していたところ、ちょっと変わった出立ちの男性がフラッと現れ、私に謎のCD-Rを渡して去っていきました。当該のCD-Rは怖くて再生できていないのですが、一体何が入っているのだろうか。一応、今も捨てずに保管してあります。

ユーティカで出会った人
ユーティカの駅舎の前で時間を潰していたら現れた御仁。謎のCD-Rを私に手渡し、去っていった

21時前に列車が到着。今回も車中泊で、シカゴに到着するのは翌日の昼前です。

ユーティカの駅舎の中の様子
街は寂れているが、駅舎は荘厳

利用した便:

  • Maple Leaf – ナイアガラフォールズ (米国側) → ユーティカ (360 km・4時間)
  • Lake Shore Limited – ユーティカ → シカゴ (720 km・13時間)

この時点での車中泊数: 6泊

行程10 – シカゴ → シアトル (2車中泊)

行程4で西海岸から2晩かけて訪ねたシカゴに、再度到着。

ツアーに参加してシカゴの街並みを探索

前回は1泊だけしかできませんでしたが、今回は数日かけてシカゴを練り歩きます。シカゴといえば、19世紀後半から20世紀初頭にかけての近代建築で有名です。そこで、建築ツアーに参加して見識を深めようと考えました。ツアーガイドの英g (ry

シカゴの近代建築見学ツアーに参加して街中を歩く
シカゴの近代建築見学ツアーに参加して街中を歩く
Marquette Building (マークイットビルディング)
Marquette Building (マークイットビルディング)。ツアーガイドがシカゴの建築様式の代表例などと説明していた
Rookery Building (ルーカリービルディング)
Rookery Building (ルーカリービルディング)

また、序盤の西海岸で見かけて気になっていたSegway (セグウェイ) のツアーに、シカゴで参戦。当時、各地にSegwayのツアーがありましたが、たまたま都合がついたのが2度目のシカゴ来訪のタイミングと相成りました。下の写真のように公園で練習したのち、Segwayに乗って街中の観光に繰り出すツアーです。

シカゴで参加したSegwayツアーの様子
当時はまだ比較的珍しかったSegwayの体験ツアーに参加

果たせなかった南部訪問を埋めるクレオール料理

今回のグルメでアタリだったのは、ケイジャン・クレオール料理のレストラン。想定外の事態で南部を訪れられなかった私にピッタリの食事でした。

シカゴにあったクレオール料理のレストラン「Heaven on Seven」
クレオール料理のレストラン「Heaven on Seven」(残念ながらパンデミックの最中に閉業となってしまった模様)

撮った写真は写りがイマイチなので掲載を保留としますが、エビのエトゥフェ (Étouffée) をいただきました。

Heaven on Seven, New Orleans-themed restaurant in Chicago's Loop, permanently closed
The owner said he is selling the space and its recipes.

西海岸目指して、再び44時間の鉄道旅

シカゴの次は、再度西海岸に向かいます。目的地はシアトル (Seattle)。

そして、行程4と同様、今回もこの長い長い道のりをノンストップで制覇します。利用するのは「Empire Builder (エンパイアビルダー)」という鉄道サービス。所要時間も前回同様44時間です。

グレートプレーンズと家畜の群れ
グレートプレーンズと家畜の群れ
車窓から眺めるロッキー山脈
車窓から眺めるロッキー山脈

この頃になると、長距離鉄道の中で社交的に振る舞う術も多少身についており、夜中の展望車でこっそり宴に興じることも。

夜中の展望車にて
夜中の展望車にて

ただ、この頃になると長距離鉄道のワクワク感は完全に消え失せており、たまに展望車に出てきて人と話をする以外は、シカゴで買っておいた本を呼んだりして時間を潰します。行程4も含め、長距離列車の展望車・食堂車では色々な人との出会いに恵まれました。駆け出しのグラフィックデザイナー、映画のVFX技術者、チベット仏教に帰依した尼僧、マイクロブルワリーの製造担当者、高校教師など、さまざまなバックグラウンドの方との会話を通じ、自分の世界が少し広がった気がしました。

利用した便:

  • Empire Builder – シカゴ → シアトル (3,500 km・44時間)

この時点での車中泊数: 8泊

行程11 – シアトル → バンクーバー

シアトルに到着したのは、バンクーバー発の帰国便に登場する2日前。シアトルには1泊だけ滞在し、翌朝にはバンクーバーに向かいます。

列車がシアトルのキングストリート駅 (King Street Station) に到着したのは午前10時過ぎ。時間は限られているものの、日中はパイクプレイスマーケット (Pike Place Market) 周辺の観光に繰り出します。

パイクプレイスフィッシュマーケット (Pike Place Fish Market)
パイクプレイスフィッシュマーケット
パイクプレイスマーケットで海鮮物を売る商店
海鮮物を売る商店

Beecher’s Handmade Cheese

シアトルの食。フィッシュマーケットで魚介にありつくというのも一興ですが、推しはBeecher’s Handmade Cheeseのマッケンチーズ。ロサンゼルス国際空港でよく使うターミナルにも出店しており、そのターミナルを使う際には必ず立ち寄っています。

シアトル・パイクプレイスマーケットのBeecher's Handmade Cheese
パイクプレイスマーケットのBeecher’s Handmade Cheese
ロサンゼルス国際空港のBeecher's Handmade Cheese
こちらはLAXの店舗

しばしばサイドメニューとして出てくる料理ですが、サイドで頼むには脂質やカロリーが気になるので、このようにちょこっと単品で食べるくらいがちょうどいい。バーベキューやステーキのお供にこいつはちょっとどうかしてる感じ。

マッケンチーズと水
最近LAXで食べたMac & Cheese
Home - Beecher's Handmade Cheese
Everything produced by Beecher’s, from the handcrafted cheeses to the delicious frozen entrees, side dishes, and cracker...

シアトルマリナーズのホームゲーム

当時は、野球のイチロー選手に加えて、城島健司選手がシアトルマリナーズ (Seattle Mariners) に所属していました。私は今も昔も野球にそれほど興味はありませんが、たまたまホームゲームの日だったので、シアトルマリナーズの試合を見に行くことにしました。選手が写った写真は肖像権などの兼ね合いで掲載してよいものか判断しかねたので、控えておくことにします。

セーフコフィールド (Safeco Field) のサイン
プレーボール1時間前のセーフコフィールド (Safeco Field)
試合終了後のセーフコフィールドのコンコース
試合後の球場のコンコース (なおマ)

最後の鉄道乗車

翌朝、最終目的地であるバンクーバーに向かいます。

オレゴン州の中部から、国境を越えてバンクーバーまでを結ぶ「Cascades (カスケーズ)」を利用します。これが最後の鉄道乗車ですが、未練は微塵もありません。

現地で購入したカップ焼きそば
早朝の出発だったので、ずっとバックパックに忍ばせていたMaruchanをかっこんで出発。お湯を注ぐのではなく、水を入れてレンチンするのが興味深かった
シアトルで食べたChicken Teriyaki
Maruchanだけだと物足りなかったのか、Chicken Teriyakiで小腹を満たす (朝6時半)
バンクーバーのパシフィックセントラル駅 (Pacific Central Station)
バンクーバーのパシフィックセントラル駅 (Pacific Central Station)

お土産探しに奔走したバンクーバー

バンクーバーには正午過ぎに到着。翌朝に日本行きのフライトを控えているのですが、ここまで道中周りへのお土産をほとんど買っていません。買い物に奔走した結果、特に観光らしき観光をすることなく時間が過ぎ去ってしまいました。

バンクーバーのAphrodite's Cafe
いい感じのヴィーガンカフェ

こうした形で、無事充実した旅を終えることができました。

バンクーバーの空港にて
バンクーバーの空港にて

利用した便:

  • Cascade – シアトル → バンクーバー (250 km・4時間)

この時点での車中泊数: 8泊

最後に

過去1ヶ月弱にわたって、十数年も昔の一人旅の様子を紹介させていただきました。

最近も米国西海岸に訪れることはあるのですが、当時と現在とを比べると、治安や物価の面で著しい違いを感じます。そうした点で、当時の私と同じ旅路を辿ることを今の若い方に勧められるかというと、少し躊躇してしまいます。

物価という点では、航空券・USA Rail Passの費用は別として、予算は1日80米ドルで組みました。当時は1ドル100円台後半だったので、1日1万円のイメージです。外食や観光には惜しみなく資金を投じた一方、ユースホステルや車中泊などで宿代を節約したこともあり、なんとか予算内でやりくりすることができました。

ただ、現地の物価上昇や昨今の円安ドル高を鑑みると、現在だともっと余裕を持った予算が必要となってしまいそうです。しかし、今と比べれば好条件とはいえども、当時の私はアルバイトの収入だけだと資金が足りず、手持ちの服や家電・ガジェットの類をひたすらヤフオクに出して金策したのもいい思い出です。

米国横断の旅はこちらで締め括りとなりますが、翌年には似たような趣旨でヨーロッパ鉄道旅にも繰り出しております。服飾関係のネタが尽きたら、ヨーロッパ編にも手を出すことがあるかもしれません。

オーストリア・ザルツブルクで降車した電車
とある欧州の都市にて


Authored by
Navy Circle

サルトリアル・クラフツマンシップを中心としたクラシックファッションを追いかけるY世代。Respecting the long-lasting classics and craftsmanship

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