アメリカ大陸横断の旅 (4) 北東回廊編

元々の当Webサイトの主旨はどこへやら、過去数回にわたってアメリカでの鉄道旅の回顧録を発信している今日この頃。

最も直近となる第3回のエピソードでは、ロサンゼルス (Los Angeles) からシカゴ (Chicago) までの道のりを駆け抜ける「Southwest Chief」での車内生活の様子を中心にお届けしました。

北東回廊とは?

ところで、ここまで西海岸編、大陸横断編と続けてきたのですが、今回は「北東回廊編」と名付けました。

東海岸の主要都市を結ぶ北東回廊

東海岸の北部には、ワシントンDC (Washington DC)・ボルチモア (ボルチモア)・フィラデルフィア (Philadelphia)・ニューヨーク (New York)・ボストン (Boston) といった大都市が連なっています。北東回廊とは、これらの都市を一直線に結ぶ全長700 km余の鉄道路線「Northeast Corridor (ノースイーストコリドール)」の和名となります。

北東回廊 - Wikipedia

毎回冒頭で紹介する行程ですが、今回は行程6・行程7・行程8をピックアップしていきます。これまでのルートと比べると比較的短いものではありますが、行程6・行程7を通じてNortheast Corridorを端から端まで制覇することとなります。

北米大陸横断鉄道旅行の行程
北米大陸横断鉄道旅行の行程

ただし、この辺りから鉄道移動に少しダレてきて、乗車中の出来事などに関する記録や鉄道関連の写真があまり多く残っていません。そのため、経由地での出来事多めで進めていきたいと思います。

電車と電気機関車

ちなみに、これまで通ってきた区間とは異なり、Northeast Corridorは全区間で電化されているのがユニークなところ。そのため、ディーゼルエレクトリック機関車ではなく「電気機関車」が走っている、米国の鉄道網だと珍しい部類の区間となっています。

電化された区間を走るAmtrakの列車
電化された区間を走るAmtrakの列車。架線とパンタグラフがあるのがわかる

ここで、恐らく多くの方には耳馴染みのないであろう「電気機関車」ということばを挙げてみました。私自身も、今回の一連の記事作成に向けて調査をする中で初めて知ったものです。

日本を走る鉄道のうち、貨物列車を除いた多くが「動力分散方式」を採用しているのに対し、米国を走る鉄道は編成のうち一部の車両 (機関車) のみが動力を持つ「動力集中方式」となっています。そのため、乗客を収容する客車自体は動力を持たず、機関車に牽引される形でレールの上を走ることとなります。一方、我々が普段よく使う「電車」ということばは、動力を持つ客車や貨車を指すものなので、たとえNortheast Corridorのように電化された区間であっても、それ自身が動力を持たないAmtrakの客車を「電車」と呼ぶのは誤りのようです。

数減らす列車の「動力集中方式」 世界的に「分散式」へなぜ変化? なおも集中式貫く国も | Merkmal(メルクマール)
日本の電車や気動車で主流の「動力分散方式」が世界で広がっている。機関車牽引の「動力集中方式」のデメリットが顕在化してきたためだ。しかし、そう劇的に広がるわけでもない。それには数の問題のほか、その国ならではの事情を抱えるケースもある。

客車に動力装置を持たせる必要がなく、台車がコンパクトにできるからか、Amtrakの客車には2回建てのものも多くみられました。また、日本の事情とは異なり、多くの駅にと置いて駅のプラットフォームが嵩上げされておらず、地面と同じ (すなわち線路とも同じ) 高さなのも、動力集中方式の客車ならではなのでしょうか。

2階建てとなっているAmtrakの客車
2階建てとなっている客車。ホームは嵩上げされておらず、線路と同じ高さになっていることにも注目

高速鉄道「Acela Express」

また、Northeast Corridorでは高速鉄道である「Acela Express (アセラエクスプレス)」が運行されています。ただし、シリーズ初回の記事でも言及しましたが、USA Rail PassではAcela Expressに乗車することはできません。

Acela Expressの車両
Acela Expressの車両
By Fan RailerOwn work, CC BY-SA 4.0, Link

行程6 – ワシントンDC → ニューヨーク

さて、行程5にて、中西部シカゴ (Chicago) からワシントンDCを訪れました。

首都ワシントンDCでやったことといえば、ホワイトハウス (The White House) やモニュメント (Washington Monument) を見たり、といった程度。わざわざ立ち寄るほど、何かを満喫することはできませんでした。今回は1泊だけだったのでちょうどよい塩梅だったのですが、もし滞在が長くなるならスミソニアン博物館に訪れたりしてもよかったかも。

The White House
The White House
ワシントンDCではグルメなエクスペリエンスも一切なし。何でもないサンドイッチチェーンで夕食を済ます
ワシントンDCではグルメなエクスペリエンスも一切なし。何でもないサンドイッチチェーンで夕食を済ます

次の目的地であるニューヨークには、「Northeast Regional (ノースイーストリージョナル)」というサービスで向かいます。約3時間の旅で、東京から大阪に向かうような感覚でしょうか。ただし、高速鉄道ではなく鈍行線ですが。

ワシントンDC・ユニオン駅の駅舎内
古代ローマの様式に触発されたとされる、ワシントンDC・ユニオン駅の荘厳な駅舎
Northeast Regionalの座席と電源コンセント
Northeast Regionalはビジネス利用者が多いからか、各座席に電源が備わっている

利用した便:

  • Northeast Regional – ワシントンDC → ニューヨーク (360 km・3時間)

この時点での車中泊数: 5泊

行程7 – ニューヨーク → ボストン (往復)

ニューヨークは大きな街だけあって、他の都市よりも長めに時間を取って滞在しました。

フォトジェニックなソーホーのピザスタンド。味はLAのピザ屋に軍配
フォトジェニックなソーホーのピザスタンド。味はLAのピザ屋に軍配
ニューヨーク・マンハッタンの吉野家
出汁が恋しくなって尋ねたのが此処

国連本部ツアーと言葉の壁

到着早々赴いたのは国連本部。国連総会が執り行われる総会ホールなどを見学させてもらうことができました。その日の日本語ツアーは既に終了していたため、英語のツアーに参加したのですが、ガイドの方がラテン訛りの強い人。今回も何をお話しされているのかあまりわからず。

有名な彫刻「The Knotted Gun (発射不能の銃)」
かの有名な彫刻「The Knotted Gun (発射不能の銃)」
到着して早々に訪れたのは国連本部。内部見学ツアーで総会ホールを訪ねる
到着して早々に訪れたのは国連本部。内部見学ツアーで総会ホールを訪ねる

ミュージカルと言葉の壁

ニューヨークといえばマンハッタン、マンハッタンといえばブロードウェイ、ブロードウェイといえばミュージカル…… ということで、人生初のミュージカル観劇にも赴きました。ストーリーなどのわかりやすさ重視で「The Lion King (ライオンキング)」を選びましたが、例の如く言葉の壁に激突。

ライオンキングのミュージカルホールにて
子どもでもわかりやすかろう、ということで観劇したライオンキングのミュージカル。正直1ミリも英語がわからなかった

ウォール街とリーマンショック

数日かけてマンハッタンを練り歩き、金融街であるウォール街 (Wall Street) にも訪れました。しかし、私が訪れたのは、あのLehman Brothers (リーマンブラザーズ) 社が米国連邦破産法第11条 (チャプター11) に基づく破産宣告を行ったその日でした。特に界隈がざわついている様子はありませんでしたが、その後の事の深刻さを知って驚いたものです。

ウォール街の標識
私がかのウォール街を訪ねたまさにその日、あのリーマンブラザーズによるチャプター11手続きが報道された

再びNortheast Regionalに乗車、ボストンへ

今回も、前回の行程と同じNortheast Regionalに乗り込みます。所要時間も4時間程度で、前回と同じ。

ボストンには1泊のみで、観光といえば街中を散策した程度。これまで訪れた他の都市よりも、通りがゴミで散らかっていたりせず、整然でいい印象を抱いていました。到着の翌日にはニューヨークに引き返し、さらに翌日のナイアガラフォールズ行きに備えます。

ハーバード大学のキャンパス
ハーバード大学のキャンパス
極度に抽象化された、ボストン名物のロブスター
極度に抽象化された、ボストン名物のロブスター

利用した便:

  • Northeast Regional – ニューヨーク → ボストン (370 km・4時間)
  • Northeast Regional – ボストン → ニューヨーク (370 km・4時間)

この時点での車中泊数: 5泊

行程8 – ニューヨーク → ナイアガラフォールズ (加)

ボストンから戻った次の早朝から、ナイアガラフォールズに向けて移動します。ニューヨークからナイアガラフォールズへは700 km以上の長距離便となりますが、今回は昼行便を選択しました。朝7時に乗車し、午後4時に目的地に到着するようなスケジュールです。

米加国境にまたがるナイアガラフォールズ

ナイアガラの滝は米国・カナダの国境にまたがる巨大な滝で、米国ニューヨーク州とカナダ・オンタリオ州の双方にナイアガラフォールズという街が存在します。これは鉄道駅も然りで、国境を挟んで2つのナイアガラフォールズ駅が設置されています。カナダ側の方が滝の全景を見渡せること、およびカジノや商業施設でより賑わっていることから、今回はカナダ側を目指すことにしました。

今回は、ニューヨークからカナダ・トロントを結ぶ「Maple Leaf (メイプルリーフ)」を利用します。この便は、ちょうど今回の目的地であるカナダ側のナイアガラフォールズ駅の手前で国境を超えることとなるのですが、入国審査は乗客は車両から降りずに、入国審査官が一席ずつ回って確認を進める方式となっていました。すべての乗客の入国審査を終えるのに、1時間ほど時間を要していたと当時の記録にあります。

入国審査のスタンプが押された乗車券の半券
入国審査のスタンプが押された乗車券の半券
カナダの鉄道運行会社であるVIA Rail Canadaのサイン
カナダでは、Amtrakの代わりにVIA Rail Canadaという会社が鉄道を運行している

利用した便:

  • Maple Leaf – ニューヨーク → ナイアガラフォールズ (カナダ側) (740 km・9時間)

この時点での車中泊数: 5泊

最後に

今回は少し鉄道成分が薄めとなってしまいましたが、北東回廊を通じて米国東海岸のメジャーな都市に訪問した際の出来事を紹介しました。

私にとって、米国本土を訪ねたのはこの度が初めて。ただ、色々な縁があり、ニューヨークやボストンにはその後何度も訪れる機会を得ることができました。パンデミック以後は東海岸には向かうことができていないのですが、もしも為替が一段落したら再度歩き回ってみたいと思います。

下の続きの記事にて、東海岸から再度西海岸を目指す旅の最後のエピソードを紹介し、本シリーズを締めくくりたいと思います。

Authored by
Navy Circle

サルトリアル・クラフツマンシップを中心としたクラシックファッションを追いかけるY世代。Respecting the long-lasting classics and craftsmanship

Navy Circleをフォローする

こちらの記事はお楽しみいただけましたか?

ご質問や気になる点などがあれば、または、本記事に関連しなくともご関心をお持ちの点があれば、ぜひ下のフォームから匿名・非公開のフィードバックをお聞かせください!いただいたご指摘を拝見し、当サイトがさらに皆さまのお役に立てるように努めます。なお、個別の回答をお約束するものではございませんのでご了承ください。

本ページ最下部のコメント欄からも、ぜひご意見をお寄せください。


    雑記

    コメント 本記事の内容について、ぜひ忌憚なきご意見をお寄せください。