下の一連の記事で紹介した、クロコダイル革のミニ財布フルオーダーの経緯に関する記事の最終編です。
前回の記事では、入手できた革を用いて作りたいミニ財布の仕様を最終化する経緯を紹介しました。



ミニ財布の完成
手元に届いたミニ財布がこちらです。ナイルワニの革のなかでも、顎の部分を使ったものです。写真ではわかりにくいですが、この段階では革はマットな風合いです。

かぶせからぐるっと一周、1枚のパーツで構成することでワニ革の斑 (ふ) の美しさを楽しめるようにしました。今回は外装にクロコダイルの顎の革を使いましたが、斑のパターンとしてはとても良いと感じます。顎から胴にかけての斑のパターンが連続的に変化する様子を楽しめます。かぶせ側が顎の先端側です。

縫製もとても丁寧です。飾りネンもしっかり入れてくれています。

元ネタにした既製品とも比べてみました。元ネタの方は牛革製です。10年以上愛用してきた元ネタも決して悪くはないのですが、やはりワニ革の方がグレードが2, 3段階アップしたような気がします。

1点、上手くいかなかったこと
前回の記事でも挙げたとおり、今回はこちらで要求仕様書を作成し、可能な限り要求を明確に挙げ、かつメーカーおよび職人の方と合意を取って進めるようにしました。そうした中でも、ひとつ失敗してしまったのがコバの仕上がりです。
私からは「ふのり」で固めて磨いていただくようお願いしました。いわゆる切り目本磨きです。しかし、仕上がりがイマイチでした… おそらく、この仕上げ方はワニ革にはあまり向かないのだと想像されます。

自分でコバを塗ってみた
少し不恰好なので、コバ塗料を使ってコバに色付けすることとしました。イタリアのラグジュアリーブランド〈Valextra (ヴァレクストラ)〉のイメージを借りて、暗めの顔料でコバを仕上げるイメージを考えました。
そこで、イタリアの〈Fenice (フェニーチェ)〉社による〈プロフェッショナルエッジペイント〉というコバ仕上げ材を購入し、コバに色を塗ってみました。

塗り方はYouTubeにある動画を参考にしました。昨今、Webにはこうした資料がたくさんあるので大変ありがたいです。私の場合は、少しだけ水で薄めると塗りやすかったです。原液のままだとややダマっぽくなりやすかったため。
しばらく使ってみて
コバに着色し、しばらく使ってみた様子も少し紹介します。
まず、一番大きく風合いに影響したのが保革クリームの塗布です。フランスの皮革ケア用品メーカー〈Saphir (サフィール〉の〈サフィールノワール レプタイルクリーム〉を塗ったところ、納品直後とは打って変わってピッカピカの仕上がりになりました。同時に、色に少し深みも生まれています。
エキゾチックレザー用の保革クリームは、牛革など向けのそれと比べて水分が少なめの処方になっているようです。つまり、ほぼロウ分ということになるのかと。それはもうツヤツヤに光沢が出ること請負なし。
あまりにも光沢がでたので驚きましたが、もともとグレージング仕上げを想定していたこともあり、光沢感は大歓迎です。


連続的な斑、そして斑のパターンの変化が綺麗です。

コバは濃紺に塗りました。



カードを収納するポケットが2つあり、ここに各種カードを重ねて収納しています。かぶせの内側は尾の革があてがわれました。どちらかというと尾は付加価値の低いパーツと見なされがちですが、今回はかなり安価に仕上げていただいたので文句は言えません。

小銭が入る部分の内装はルガトショルダーです。クロコダイル革と色がぴったり一致。かぶせを開けた状態でも、中を覗き込まずに見える範囲は全てクロコダイル革を使用いただいています。無双仕立て「っぽく」作られているということです。

終わりに
このようにして、おそらく「アガリ」になるであろう財布を手中に収めることができました。

とても満足感の高い一品です。完全キャッシュレス時代が到来するか、ワニ革が世間的にNGになる向こう何年かにわたって、心から愛用できる小物となりそうです。
(アガリと言っておきながら、全く同じパターンの色違いの製作を画策してもいます……)
他にも、財布を含む革小物や鞄についていくつか記事を公開しています。よろしければ、下のリンクから併せてご覧ください。

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