クロコダイル革の小物を作る (3) 仕様の最終化と発注

下の記事で紹介したクロコダイル革のミニ財布フルオーダーの経緯に関する記事の第3弾です。今回も、ワニ革での小物製作に関心のある方の参考にしていただければという思いで、記事を作成しました。

前回は、製作をお願いする工房・メーカーを探し、製作に使う革選びのプロセスまでを紹介しました。今回は、目当ての革が見つかったところからのストーリーを共有したいと思います。

革の決定と仕様調整

待ちに待って入荷されたのが下の革です。写真は店舗で撮影させていただいたものです。

製作を進めた青のクロコダイル革 Crocodile skin dyed blue
製作を進めた青のクロコダイル革 | Crocodile skin dyed blue
製作を進めた青のクロコダイル革 Crocodile skin dyed blue
製作を進めた青のクロコダイル革 | Crocodile skin dyed blue

色はロイヤルブルーと呼ばれるような、深みがあって鮮やかな青です。まさにイメージどおり。当初期待していたイリエワニ (スモールクロコダイル、ポロサスワニとも) ではなくナイルワニの革ですが、イリエワニに強いこだわりがあるわけでもないのでよしとしました。

ただし、入荷されたのはサイズが30 cmとかなり大きな革でした。前回の記事でも紹介したとおり、革の仕入れ値はサイズに比例する形で上昇します。

今回は、丸々一枚の革をメーカー側で仕入れて (買って) いただき、こちらはあくまで製作を依頼するミニ財布の製作費用だけをお納めする形となります。こうした大きな革を使ってセンター取りしてもらうとなると、高額になる革の仕入れ値が私の負担する製作費用に跳ね返ってしまいます。
(現に、センター取りするなら当初の概算見積よりも顕著に高額になる旨を案内されました。概算見積は小さい革を使う場合を想定したものとのこと)
加えて、下の図に示すように、比較的小さなミニ財布に対して斑 (ふ) が綺麗に収まらない問題もあります。

クロコダイル革の大きさと斑の現れ方
クロコダイル革の大きさと斑の現れ方

そうしたことから、今回はセンター取りではなく、メインパーツを顎の部分から取っていただくことにしました。中央の部分は、メーカー側で独自企画の商品製作に利用されるとのこと。そうすることで、私の方での費用負担を下げていただくことにしました。

メインパーツの取得位置イメージ | Clicking the body part from the skin
メインパーツの取得位置イメージ | Clicking the body part from the skin

仕様の最終化

使う革も決まったところで、仕様を最終化します。

主な要求事項

協議の結果、今回は以下のような要求を挙げて製作を進めていただくことにしました。

  • 表から見えるところは全てクロコダイル革を使うことで、無双仕立てっぽくする
  • クロコダイル革を使わない部分はルガト (Rugato) ショルダーを使う (こちらから支給)
  • バネホックは伊Prym (プリム) 社のものを使う (こちらから支給)
  • なるべく厚みが出ないようにする

無双仕立て – ワニ革製品の文脈においては、内装も含めて目視できる箇所全てにワニ革を使用すること。目に付く主要なパーツだけをワニ革とし、他の部分は別の素材 (牛革や合皮など) で代替する場合と比べて高級感が増す。元は着物の裏地 (袖裏など、目につきやすい部分) に表地を使うことを指しており、そこから派生したものと考えられる。

ルガトショルダーは、ベルギーのタンナリー「Masure (マズル)」社のヌメ革です。たまたま手元にあったサンプルの色がクロコダイル革の色と完璧にマッチしたので、副資材に使うには少し贅沢すぎるもののルガトショルダーを購入して支給しました。トラが大変綺麗な革ですが、内装にしか使われないのでもったいなくもあります。


バネホックは、私が個人的にPrym社のもののスナップ感が好きなので、Prym社のもので製作をお願いしました。すこし硬めで、長年使っていてもバネがくたびれにくいイメージです。もともとはFiocchiというメーカーのもので、FiocchiかPrymのどちらかの名前がメス側の金具に刻印されています。

Prym社の金具 | Metalware by Prym, Italy
Prym社の金具 | Metalware by Prym, Italy

最後に、今回少しこだわりたかったのが財布の厚みです。シリーズ最初の記事でも言及したとおり、私は財布は持たなくて済むなら持ちたくない、と考えています。財布を持たざるを得ないとしても、なるべくポケットの中で収まりを良くしたいので、なるべく厚みがでないように作成してもらうことをお願いしました。あくまで定性的なお願いで、「厚みが何mm以下になるようにしてほしい」といった要求は挙げていません。

要求仕様書の作成

また、今回はメーカー側で製作仕様書を起こしてくれたりはしなかったので、こちらで要求仕様書を作りました。初めてのオーダーなので、ミスコミュニケーションによる事故を防ぎたかったためです。メーカー側で図面を起こしてくれないところなど、こうしたところが安さにつながっているのかもしれません。私は自分で仕様書を起こすのは苦ではないので、問題とは感じていません。全体的に少し伏せたいところがあるのでフィルタをかけていますが、下のような1枚ものの資料を使って円滑なコミュニケーションを図るようにしました。

要求仕様書 | Requirement documentation, intentionally distorted to mask some detail
要求仕様書 | Requirement documentation, intentionally distorted to mask some detail

最後に

上のように仕様を決めて、製作を発注しました。本シリーズの締めくくりとなる下の記事で、納品された作品を紹介しています。

コメント 本記事の内容について、ぜひ忌憚なきご意見をお寄せください。