深喜毛織のミルショップを訪問してみた (2) 陳列されている商品

前回の記事では、大阪・泉大津市の紡績・毛織物メーカー「深喜毛織 (ふかきけおり)」のミルショップを訪問することとなったいきさつを紹介しました。

ミルショップの入口 Entrance to the mill shop
ミルショップの入口 | Entrance to the mill shop

あまり多く写真を撮れていないのですが、店内で撮った写真を交え、販売されていた商品について紹介したいと思います。店内は写真撮影がOKであることに加え、SNSへの投稿も可との札が掲げられていました。

なお、ミルショップ店内の様子は深喜毛織の公式Instagramアカウントからも発信されているようです。こちらもご覧いただきながら、店内の様子を感じ取っていただければ嬉しいです。全体を通して好意的な内容となっていますが、本記事は私の主観に基づくものであり、PRの類ではありません。

店内で売られているもの

私が訪ねた2022年12月末の時点では、大きく分けて以下の2つの位置付けに属するような商品を見ることができました。

卸売向けと思しき商品 (セール対象)

フロアスペースの多くを占めているのは、百貨店やカタログ通販などに卸されていると思しきセーター類やマフラー・ストール、毛布などでした。これらがミルショップのメイン商品のようです。その多くに赤札がついています。詳しくは確認していませんが、卸先から戻ってきた商品の最終処分のような位置付けでしょうか。

ミルショップの一角 Inside the shop
ミルショップの一角 | Inside the shop

正直なところ、こちらの類のニットウェアにはあまり食指が伸びませんでした。カシミヤ100%のセーターなども見受けましたが、上等なものは見つかりませんでした。店の位置付け上、店頭商品は常に入れ替わっていると予想され、単に私の訪問したタイミングが悪かっただけかもしれません。

一方、毛布の方は、カシミヤがふんだんに使われた贅沢な毛布が並んでいます。大きさは確認し損ねてしまったのですが、カシミヤが高い混率で使用された毛布が10万円以上の価格で並んでいました。

毛布類 Blankets
毛布類 | Blankets

私も羽毛布団には大枚を叩きましたが、毛布は直接肌に触れるものでもないので化繊のものに甘んじています。想像ですが、カシミヤの毛布になると、軽くて暖かく、かつ放湿性が良かったりするのでしょうか。

マフラー・ストールに関しては、アイベックス100% (もしくはカシミヤかウールとの混紡・交織かも) といった珍しいものを見かけました。ただ、全体を通して、希少な絨毛を使っているなどのニッチな商品はあまり見かけませんでした。価格の面でも、すごくお値打ち感を覚えるものは見当たらなかった印象です。もしも見られた商品がこれだけなら、わざわざ大阪市街から足を伸ばす必要はなかったかも…… と感じてしまいますが、次に紹介する直販商品を見られたことが大きな収穫でした。

深喜毛織のオンラインショップで販売されている直販商品

深喜毛織では、ニットウェアを中心に直販の製品が展開されています。

FUKAKINET
FUKAKINETは「深喜毛織株式会社」の公式オンラインショップです。各種羊毛の他、カシミヤ・アンゴラ・アルパカ等の高級素材を使用した製品を取り扱っています。マフラー、ストール、ニット、セーター、アンダーウェアなど他にはない商品を多数販売し...

限られたスペースではありますが、ミルショップの一角にそうした商品が並べられていました。
ただし、こうした直販商品はミルショップで購入することはできず、購入したい場合はオンラインショップに誘導されるようです。売上管理の兼ね合いでしょうか。

Baby Cashの糸で編まれたブルゾン

残念ながら写真には残せていないのですが、例えば下のニットブルゾンの現物を見ることができました。

Baby Cashのニットブルゾン A jacket with Knitted Baby Cash
Baby Cashのニットブルゾン | A jacket with Knitted Baby Cash
スクリーンショット出典: https://shop.fukakinet.jp/view/item/000000000014

生成りのBaby Cashを使ったものらしいです。深喜毛織の下のWebページで解説されていますが、Baby Cashは仔山羊のヴァージンファーを使った商品とのことです。

FUKAKINET
明治二十年創業、本物を追求し続ける「深喜毛織株式会社」です。日本の毛織物メーカーとして唯一、カシミヤ製造業者の国際団体CCMIに加盟。原料から調合、ミュール紡績・製織・染色整理までの一貫工場として、最高級カシミヤ製品の製造を行っています。

ニットや織物としての肌触りもさることながら、特筆すべきはその透き通るような白さでしょうか。私の手元にも生成りのカシミヤのニットプルオーバーがありますが (下の写真の一番右)、色味はアイボリーといったところで、かつ暗めの色の毛が混じって編まれています (もしかすると、あえて杢っぽく編んでいるのかもしれません)。

生成りのカシミヤニット (右) | Knitted undyed cashmere (on right)
生成りのカシミヤニット (右) | Knitted undyed cashmere (on right)

ぜひ、上のスクリーンショットに貼ったリンクから商品ページの写真をご覧いただきたいのですが、漂白をせずにこれだけの白さを実現できるのは驚くばかりです。

なお、Baby Cashの元になる産毛は、1頭の仔山羊からわずか40 gしか採取できないとのこと。一方で、こちらのニットブルゾン、手に持った感じで重さが1 kg程度ありそうな肉厚なものでした。単純計算で25頭分、歩留まりを考えるともっと多くの仔山羊の上に一着のブルゾンが成り立っていると考えると、真に贅を尽くした一着だなと実感します。これだけデリケートで上質な生地となると、どんなオケージョンで着ればいいのか悩ましいところです。試着をするのも恐れ多く、ただ眺めるばかりでした。

イタリアのLoro Piana (ロロピアーナ) もベビーカシミヤを含む高級獣毛の商品を展開していますが、Loro Pianaの商品と価格を比べると、深喜毛織のBaby Cashは手が出せなくもない気がします。

ベビーカシミヤ | 卓越性 | ロロ・ピアーナ

Golden CashとBaby Cashを交織したマフラー

現物を見ていいなと感じたのが、Golden CashとBaby Cashを贅沢に使ったマフラー。

Golden CashとBaby Cashを交織したマフラー Scarfs woven with mixture of Golden Cash and Baby Cash
Golden CashとBaby Cashを交織したマフラー | Scarfs woven with mixture of Golden Cash and Baby Cash

Golden Cashは中国・山東省に生息するカシミール山羊の毛を使った生地とのことで、原毛がベビーカシミヤに匹敵する細さであることと、赤みがかった刺毛を持っていることが特徴とのことです。Baby Cashは内モンゴル自治区由来なので、互いに出自が異なるということになります。

FUKAKINET
明治二十年創業、本物を追求し続ける「深喜毛織株式会社」です。日本の毛織物メーカーとして唯一、カシミヤ製造業者の国際団体CCMIに加盟。原料から調合、ミュール紡績・製織・染色整理までの一貫工場として、最高級カシミヤ製品の製造を行っています。

いずれも、経糸は生成りのGolden Cash、緯糸は生成りのBaby Cashを使うといった形で (経緯は逆かもしれません)、出自の異なるカシミヤの糸が交織されています。Baby Cashは、上述のとおり白さが際立つのに対し、Golden Cashは無染色の状態でやや茶色がかっています。すなわち、経緯で糸の色が異なることになります。

左側に写っているものは、それを利用して千鳥格子を配したデザインとなっています。

マフラーに近づいたところ。交織によって模様が生まれていることがわかる A closer look at a scarf, highlighting the pattern brought by the contrast of the two different cashmeres
マフラーに近づいたところ。交織によって模様が生まれていることがわかる | A closer look at a scarf, highlighting the pattern brought by the contrast of the two different cashmeres

商品としては、下のものになりますね。幅30 cmで、一般にマフラーとされるサイズでしょうか。

千鳥格子のマフラー A houndtooth scarf
千鳥格子のマフラー | A houndtooth scarf
スクリーンショット出典: https://shop.fukakinet.jp/view/item/000000000024

一方、右側のものは朱子織にすることで、片面にGolden Cash、もう一方の面にBaby Cashが現れるように織られているようです。ボンディングではなく、織りで実現したGolden CashとBaby Cashのダブルフェイスですね。こちらは幅70 cmで、ストールと呼ばれることが多いかもしれません。

ダブルフェイスのストール A double-faced wide scarf
ダブルフェイスのストール | A double-faced wide scarf
スクリーンショット出典: https://shop.fukakinet.jp/view/item/000000000025

個人的には、ダブルフェイスのものがマフラーの幅で提供されていれば嬉しい限りです。いずれも、Johnstons of Elgin (ジョンストンズオブエルガン) やBegg & Co (ベグアンドコー) などのマフラー・ストールと価格帯は大きく変わりませんが、柔らかさや肌触りはこれらを凌駕しているように感じます。色は生成りに限られますが、個人的には大変お薦めできるアイテムです。私自身も予算を工面して購入してみたいと思います。

最後に

今回は、ミルショップで私が見た商品をいくつか紹介しました。

一方で、大変幸いにも、深喜毛織の取組みや商品動向についてスタッフの方から話を伺うことができました。そのうち、表にして支障がなさそうな点を次の記事で紹介しています。

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