2024年に購入して、一番役立った装いのアイテム

2025年を迎えました。本年も、本Webサイトをよろしくお願いいたします。

さて、前回の記事では、昨年2024年を通して私の手元に新たに加わった装いのアイテムを紹介しました。ベストバイの代わりに、ワードローブの動向の全体像を紹介したような位置付けのものとなっています。

その中で、下のローファーを指して、「とある尺度においてはこれが私の今年のベストバイだ」としました。ペインの靴ブランド〈Berwick (バーウィック)〉のタッセルローファーです。

Berwickののタッセルローファー
Berwickのタッセルローファー

何が良かったかというと、購入前に期待していたよりも非常に実用性が高かったことです。今回は、「ある意味ベストバイ」なこちらのローファーを紹介したいと思います。

入手のきっかけ

実は、もともとBerwickのこの靴に目星を付けていたわけでもなければ、この手のローファーが欲しかったわけでもありませんでした。また、過去にBerwickの靴を所有したこともなければ、靴店で手に取ったり、興味を持って調べたりしたこともなく、このブランドとは一切接点がない状態でした。

そんな中、昨年の初夏に東京・丸の内を歩いていたところ、たまたま通りすがったBerwickの直営店のディスプレイが視界に飛び込んできました。そこで、ちょっと寄り道してみることにしたのでした。

ところで、そのとき私が履いていたのは、前回の記事でほんの少しだけ紹介したビスポークのローファー。言うまでもなく気に入っている一足ですが、近所に足を運ぶような際に気軽に履くには少し勿体無いよな、と貧乏性が顔を覗かせます。ハンドウェルトの靴ながらエレガントに見えるようにコバの張り出しを抑えてもらったりしているので、着用の際には傷など付けぬよう慎重に歩みを進める必要があるのです。また、気兼ねなく使うことを躊躇ってしまうのは、ローファーという元来軽快な作りの靴でありながらも、全体的にやや重厚な顔つきをしていることも一因なのかもしれません。

型押しのカーフで作られた、フルサドルのローファー
型押しのカーフで作られた、フルサドルのローファー

一方、Berwickの店先に並んでいたのは、アンラインドのローファーでした。その柔らかさは、私の足元を飾る誂えのローファーとは異なる魅力を放ちます。ただ、色々と眺めていたところ、このアンラインドのものとは別のローファーに目移りしてしまいました。

今回手にしたタッセルローファー

それが、今回選んだタッセルローファーです。Berwickのオンラインストアにおける商品ページでいうと、下のものになります。

Berwickのショップページ
Berwickのショップページ
スクリーンショット出典: https://berwickjapan.co.jp/products/4951flsgdb (2024年7月取得)

ベルジャンシューズスタイル

パイピングが施されたモカ。そしてやや小ぶりなエプロンが特徴的なローファー。いわゆるベルジャンシューズスタイルです。

Berwickのベルジャンシューズスタイルのタッセルローファー
ダークブラウンのスウェードを使った、ベルジャンシューズスタイルのタッセルローファー

このカテゴリだと〈Baudoin & Lange (ボードインアンドランジ)〉というブランドのものが有名ですが、国内の定価は8万円超と決して安くはありません。

Luxury Loafers, Shoes & Boots | Handcrafted Loafers | Belgian Loafers
Baudoin & Lange handcrafts comfortable, elegant Belgian loafers and boots fit for a modern lifestyle. The world's most e...

一方で、Berwickのこのローファーはたったの29,700円と非常にお手頃。これだけ安ければ、何も気兼ねせずに履いて、ボロボロになったら廃棄してしまっても惜しくはありません。

なお、ベルジャンシューズは室内履きに由来しているということもあってか、アウトソールは接着剤で貼り付けただけのセメント製法のものが多いようです。一方、こちらは中底を覗くと、マッケイ製法の特徴的な底付けステッチが見つかります。

スウェードのアッパー

アッパーは、シボのある鹿革のものとスウェードのものがありました。

Berwickのベルジャンシューズスタイルのタッセルローファー。焦茶のスウェードを使ったアッパー
焦茶のスウェードを使ったアッパー

鹿革の方は絵の具ベタ塗りのザ・ピグメントレザーといった面持ちで、私の好みではないものでした。一方、スウェードの革質は可もなく不可もなくといった印象。一般的に良いスウェードとされるものよりは若干毛足が長く、手触りもバサついている気がしますが、決して悪いというわけではありません。フェアな比較ではありませんが、下の靴に使われている銀付きスウェードと比べると、質感の差は明白です。

このスウェードは、イタリアのタンナリーである〈Conceria Opera (コンチェリアオペラ)〉の〈Florence (フローレンス)〉という床革のようです。私にとっては、初めて名前を耳にしたタンナリーでした。

Florence - Conceria Opera

スウェードは黒に明るめの茶色、紺色などいくつか選択肢がありました。いくつか試着した結果、最も使い勝手の良さそうなダークブラウンに決定。

最初からハーフラバー付きのアウトソール

ありがたいのは、ハーフラバーがビルトインとなっていること。もしもこの靴がレザーソールであったとしたら、私なら真っ先にハーフラバーを貼るであろうと思うので、このように最初から施工してあると非常に助かります。ご多分に漏れず、ハーフラバーのような靴資材や加工賃が大きく値上がりしていることも、無視できないかもしれません。

Berwickのベルジャンシューズスタイルのタッセルローファー。ハーフラバーが貼られたアウトソール
ハーフラバーが貼られたアウトソール

手元の靴と比べると、アウトソールは薄め (ウェルトの有無も加味して)。それがソールの屈曲性をもたらしているように見受けます。

半年履いてみて

冒頭に書いたように、購入時は特に何も期待はしていませんでしたが、思いのほか使い勝手の良い靴で、過去半年間非常に活躍しました。

「歩ける突っ掛け」として活躍

何と言っても、まずは突っ掛けとして使い勝手がいいこと。ローファーなので当たり前ではありますが、靴べら一本あればサッと脱ぎ履きできるので。

また、比較的安価な靴なので、少し乱暴に扱ってもそれほど罪悪感がありません。そのため、この靴は常に玄関に出しておいて、ちょっと近所に出向くときなども含めて気軽に使いました。「使いました」と過去形になっている点ですが、この記事をしたためている12月現在は、その役割は別の靴に譲られています。冬場には、ローファーは突っ掛けとしては少し寒々しいので。

それでいて、革靴としては歩きやすい一足でもあります。ここ数年はハンドウェルトの靴ばかり手にしてきましたが、マッケイ製法のアウトソールによる返りの良さが成せる技でしょうか。このBerwickのローファーを履いていて、マッケイ製法やボロネーゼ製法の靴が少しだけ欲しくなりました。手縫いのマッケイ、なんてのもいいのかも。

なお、その煽りを受けて今年出番が減ったのが、過去に下の記事で紹介した〈Jutta Neumann (ユッタニューマン)〉のレザーサンダルでした。元々この突っ掛けポジションを担っていたのがこのサンダルなのですが、昨年は1シーズンを通して片手で数えられるほどしか履く機会がありませんでした。

よそ行きの靴としても

もちろん、突っ掛けとしてだけでなく、お出かけ用の靴としても。

Berwickのローファーとリネンの洋服
Berwickのローファーとリネンの洋服

夏場は、インビジブルソックスの類も履かずに裸足で履き倒しました。ライニングには優しくない扱い方ですが、傷んだら買い換えればいいかな、という思いで。臭いの問題は十分に気をつける必要がありますが……。

Berwickのローファーを素足で着用
素足で着用

このBerwickのローファーと前述のビスポークのローファーは面構えが大きく異なるので、よそ行きの靴としての棲み分けはしっかりとできています。Berwickは柔らかい雰囲気に、ビスポークの方はかっちりとした装いに。

旅行にもピッタリ

旅行にも、もってこいの一足となっています。

昨年末に欧州の某所を訪れたのですが、そのときに相棒に選んだ2足の片方がこのローファー。脱ぎ履きが楽なので、長距離フライトの中でも快適でした。それでいて、上にも書いたようにそこそこ歩けます。ただし、ソールが薄いだけあって石畳の上を長く歩くのは無謀なので、スーツケースの中には前回の記事でも取り上げたウォーキングシューズを忍ばせておきました。

"GEL-RIDEWALK GORE-TEX" by ASICS
“GEL-RIDEWALK GORE-TEX” by ASICS

また、一応ドレスシューズの端くれなので、訪問先でちょっと畏まったレストランやホテルのバーなどを訪ねるのにも便利です。

国内の旅行でもファーストチョイスとなっています。とある高原の展望台に足を運んだ際は、駐車場から延びる遊歩道が一部ぬかるみに埋もれてしまっていたのですが、このローファーで気にせず突っ込んで行きました。もちろん泥まみれになってしまったのですが、子どもの上靴を洗うかのごとくタワシと中性洗剤で洗ってしまいます。

ところで、下の記事で紹介した〈永代製作所〉のスニーカーと今回のローファーの価格はそれほど大きく変わりません。しかしながら、〈Tannerie d’Annonay (アノネイ)〉の上質なボックスカーフを使った永代製作所のスニーカーで、ぬかるみに突入する勇気はありません。割り切ってラフに使える靴があるのはいいことなのかもしれません。

ドライビングシューズとして

ソールの返りの良さは、ドライビングシューズとしての適性にも繋がります。

Berwickのタッセルローファー。ドライビングシューズとしても有効活用
ドライビングシューズとしても有効活用

ドライビングシューズといえば、下のようなモカシンにゴム製のパーツが取り付けられたものをよく目にします。さすがにこうしたものには屈曲性が劣るかもしれませんが、たまにしか車を運転しない私にはBerwickのローファーで十分。

典型的なドライビングシューズの底面の様子
典型的なドライビングシューズの底面の様子

最後に

今回は、私が昨年購入し、期待を大きく上回る活躍を見せてくれたローファーを紹介しました。

Berwickのタッセルローファー

役に立ったポイントは、いずれもBerwickの靴ならでは…… といったものではなく、似たような靴なら何でも当てはまるのかもしれません。一方で、私は最近この手の靴を手にしていなかったため、非常に新鮮に映った次第です。

本稿の作成・公開に際してBerwickに関する巷の評判を調べていたところ、同ブランドのローファーは非常に定評のあるアイテムであることを知りました。YouTube動画やブログポストなどのレビューも多く見つかります。ただし、そうしたレビューで取り上げられているのはグッドイヤーウェルトの重厚なつくりのものばかり。今回私に刺さったのはそうした堅牢な靴ではなく、雰囲気も履き心地も柔らかい靴なのでした。

そういえば、下の記事で紹介した洋服もお世話になった〈心斎橋リフォーム〉のすぐ近所に、Berwickの旧店舗があったことを思い出しました。

現在再開発が進む有楽町。かつてその一角にそびえており、現在は取り壊しが進む〈有楽町ビル〉に、心斎橋リフォームとBerwickが入居していたのです。となると、以前から頻繁に見かけていたはずなのですが、つい最近まで興味が湧かなかったのは少し勿体無かったのかもしれません。

Authored by
Navy Circle

サルトリアル・クラフツマンシップを中心としたクラシックファッションを追いかけるY世代。Respecting the long-lasting classics and craftsmanship

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