ポータブル分光計「ColorReader」で服地の色を知る (2) 使ってみた

前回の記事で紹介したポータブル分光計「ColorReader」を、実際に使ってみます。

開封の儀

今回、ColorReaderはAmazon.co.jpで購入しました。アマゾンジャパンが販売する国内正規品です。価格は15,000円でした。

datacolor ColorReaderのパッケージ表面
datacolor ColorReaderのパッケージ表面

国内正規品なので、販売代理店のステッカーが貼付されています。

datacolor ColorReaderのパッケージ裏面
datacolor ColorReaderのパッケージ裏面

本体と充電用のマイクロUSBケーブルが付属。

datacolor ColorReaderのパッケージを開封したところ
datacolor ColorReaderのパッケージを開封したところ

iPhone 13と比べたサイズ感は下の写真のとおり。35 mmの写真フィルムを少し縦長にしたイメージでしょうか。今や、「フィルムケース」が何かを知らない世代の方も多いと聞きますが……。

ColorReaderとiPhone 13
ColorReaderとiPhone 13

黒い円盤状のパーツは、露光部 (アパチャー) の保護カバーとキャリブレーション (校正) 用のリファレンスを兼ねています。

ColorReaderのキャップと校正用リファレンス
ColorReaderのキャップと校正用リファレンス

アパチャー周辺。わずかに光源のLEDが見えます。アパチャーの直径は6 mm。

ColorReaderのアパチャー周辺
ColorReaderのアパチャー周辺

本体上で触れるのは電源ボタンとマイクロUSBポートのみです。操作は、基本的にペアリングしたスマートフォン上で行います。

ColorReaderの電源ボタンとUSBポート
ColorReaderの電源ボタンとUSBポート

セットアップ

ColorReaderは単体では使用できず、スマートフォンの専用アプリと連動させて使う必要があります。そこで、まずはアプリストアからアプリを入手します。

iOS用のColorReader用アプリの取得画面
iOS用のColorReader用アプリの取得画面

ペアリングはアプリの方から行えます。初回使用時、または前回使用時から時間が空いた際などは、センサーのキャリブレーションが必要です。キャップを取り付け、アプリの指示に沿ってキャリブレーションを行います。

アプリを使用したColorReaderの校正シーケンス
アプリを使用したColorReaderの校正シーケンス

また、必要に応じて「カラーコレクション」の登録が可能です。これは、前回の記事の末尾で少し紹介した、計測した色からそれに近い塗料の色を決めるためのものとなります。今回の私のユースケースでは必ずしも必要なものではありません。

アプリ上でのカラーコレクション選択画面
アプリ上でのカラーコレクション選択画面

服地の色の計測

試しに、紺色のジャケットの色を計測してみます。下の写真のように、アパチャーを生地に当て、アプリの画面下部にある赤い「読み込み」を押すだけで、色の計測が可能です。

datacolor ColorReaderでジャケットの色を計測する
datacolor ColorReaderでジャケットの色を計測する

すると、即座に下のような結果が得られます。画面に映る色と、服の実物の色が必ずしも同じようには見えません。これはスマートフォンのディスプレイの特性などに左右されるためです。ディスプレイの色と実物の色が同じに見えなくても、問題はありません。

ここで着目したいのは、測定された色の数値です。

特に注目したいのが、上の例だと「L 17.89 a 1.86 b -9.49」と表示されている色情報です。これは、今回測った生地の色の「絶対値」を示す情報です。このような形で、生地の色を定量的に測ることができるわけです。

やや専門的には、「CIE Lab色空間」という物差しの上で規定される色の数値となります (CIE: Commission internationale de l’éclairage、国際照明委員会)。今回使用しているColorReaderは、D65光源下での計測に対応しています。ColorReaderのデータシートには、Colorimetricの仕様として「1976 CIE L*a*b* coordinates; Illuminant D65; 10° Standard Observer」と記載されています。

そのうえで、必要に応じて「測定値を保存」しておけば、アプリの中にデータを記録しておくことができるようになります。例えば、私の場合はワードローブにある紺系の服を全てスキャンし、ひとつのパレットに保存しています。大体30着分程度のデータがある状態です。

こうしたデータがあれば、新たな紺色の服地を検討する際に、ColorReaderで測った数値がパレットの中のどの色に近いのか、すなわち、手持ちの服のどれと色合いが似ているのか、といった観点から色味の厳密な理解が進みます。また、パレットの比較とともに測定値を読み解き、紺の明るさ・暗さや赤み・青みなどの傾向を推測することもできるようになります。バンチブックや生地スワッチ、着分の在庫生地などからスーツ・ジャケットを誂えるとき、または既製品を検討する際に、ColorReaderで色味に関する深い洞察を得ることができるようになります。

生地スワッチの色を測る | Measuring the color of a textile swatch

上手く測れる生地とそうでない生地

ただし、ColorReaderはどういった生地でも色を測れるわけではありません。柄のある生地や、経糸・緯糸の色が違う生地の中でざっくり織られているものは、布地の上の測る場所によって測定結果が異なるため、なかなか一貫性のある計測が難しいです。

下の図では、計測がうまくいきやすい生地とそうでない生地を2例ずつ取り上げてみました。いずれも、生地の3 x 2 cmを拡大した写真を載せています。ColorReaderのアパチャーの直径は6 mmですが、生地のどこにColorReaderを載せてもこの6 mmに切り取られる領域の色の構成が同じなのか、それとも大きく異なるのかで、うまくいく・いかないが分かれます。

最後に

過去2回にわたって、ポータブル分光計のColorReaderで服地の色を測る取り組みについて紹介しました。

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