ドレスシューズ仕立てのサンダル

昨年の秋口に注文したドレスシューズが、2回の仮靴フィッティングを経て完成しました。夏場にピッタリな、ドレスシューズ仕立てのサンダルです。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル
ドレスシューズ仕立てのサンダル

下の写真の方がわかりやすいかもしれませんが、靴の一部がオープンなつくりとなっています。グルカサンダルと呼ばれるものに近いのかもしれません。しかし、コンストラクションはハンドウェルトで本格靴そのものなのが、他の同様の靴とは一線を画しています。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル
ドレスシューズ仕立てのサンダルを小趾側から

今回は、届いたばかりのこのサンダルを紹介したいと思います。

なお、今回の靴の写真にはシューツリーが写っていませんが、その理由は下の記事と関係があるかもしれません……。

完成までの経緯

注文の経緯は、Instagramでこのサンダルの作例を見かけたことでした。

〈Ryo Izumisawa Handmade Shoes〉による、ドレスシューズ仕立ての手製のサンダルです。

Ryo Izumisawa Handmade Shoes
Ryo Izumisawa Handmade Shoes。手作り靴教室の運営とオーダー靴の製作をしています。

早速アポを取らせていただき、都内で詳しいお話を伺うことができました。

一見すると特殊な設計の靴ですが、同じ設計のサンダルは既に何件も製作・納品の実績があるとのことでした。製作のプランについては、一般的な枠組みに当てはめたところでのMTO・MTM・ビスポークと3つの選択肢がありましたが、私はMTMに相当するオプションを選択。専用木型の削り出しと仮靴のフィッティングが含まれていますが、フットプリントは採らないといった塩梅のものです。

冒頭にも書きましたが、仮靴のフィッティングを2度実施いただき、つい先日納品いただいたという経緯です。

履き始め時点での着用感

こうしたサンダルなので、素足で軽快に履きたいところ。となると、フィッティングがシビアになるかなと考えていました。

過去の失敗とあるべきフィッティング

このサンダルと近しいグルカサンダルについていえば、イタリアの〈F.lli Giacometti (フラテッリジャコメッティ)〉が定番のひとつに数えられます。実際に、私も同ブランドのグルカサンダルを買ったことがあるのですが、こちらは素足で履くと開口部が足に干渉して履き心地が悪く、すぐに手放してしまいました。当時は靴のフィッティングについても見識が無く、そもそも正しいサイズが選べていなかったのかもしれません。

似たようなサンダルでの失敗もあり、注文当初はフィッティングに心配がありました。工房主宰の和泉澤氏によると、痛みが生じるのは靴の中で足が前後に滑ってしまうことが原因で、木型が足に沿っていれば、靴の中で足が固定されるので痛みは軽減されるはずとの談。納品後まだ3回程度しか着用できていませんが、2度の仮靴調整で木型やアッパーのパターンを追い込めたこともあってか、今のところ着用感は良好です。

中敷とライニング

素足で履くとなると、足に触れる中敷・ライニングの素材が履き心地を左右しそうなものです。

銘柄は伏せますが、肌理が細かくモチモチな革が使われています。中敷はフルソックになっているので、素足で履いても中底に汗が染みたり、ということは多少軽減できるのかもしれません。ソックシートは傷んだ際に交換が可能というのもポイントかも。

中敷・ライニングの革
いい感じの中敷・ライニングの革

完成した靴の紹介

続いて、いくつかの角度から完成した靴を紹介したいと思います。

アッパーのデザインと雰囲気

まずは、アッパーに着目してみます。

使用されているのは、フランスのタンナリー〈Tannerie d’Annonay (アノネイ)〉による〈Rusticalf Highland (ラスティカーフハイランド)〉というペットネームの革。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル
アッパーの雰囲気

スコッチグレインの型押し。アニリン仕上げの革で、色はダークブラウンとなっています。

茶系でシボ革のドレスシューズ
茶系でシボ革のドレスシューズと

ボールジョイントからウェストにかけて斜めに交差する2本の帯が、特徴的なデザイン。

斜めに交差する2つの帯が特徴的なアッパー
斜めに交差する2つの帯が特徴的なアッパー

ただ、撮った写真をGoogleで画像検索してみると、前出のF.lli Giacomettiも含め似たようなデザインの既成靴がいくつかあるようだということがわかりました。上で引用したRyo Izumisawa Handmade ShoesのInstagram投稿のうち片方は2016年のものですが、初出はどれなのでしょうか。

F.LLI Giacometti フラテッリ ジャコメッティ 靴 通販 正規店 フェートン - PHAETON
F.LLI Giacometti - FG417 - BLAKE
ELBA MESH
夏ヌメ革のメッシュをハンドペイントで仕上げました。 POLPETTA夏の定番グルカサンダルをメッシュで仕上げました。 牛ヌメ革のメッシュを職人が1足1足手塗りで染色をしています。この作業をすることによって深みのあるトーンを生み出しています。...

バックルは、いつものように金色のものを。Instagramの作例で使われていた円形で細身の金具が放つ雰囲気が気に入ったので、同じようなものを使っていただきました。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダルのバックル
金色で円形の細身のバックル

注文靴ということもあり、ストラップの穴はひとつ。アッパーやストラップが伸びて緩くなったりしないかと気になったのですが、踵周りには月型芯が入っており、ストラップも伸び止めの芯が入っているのであまり伸びることはないとのこと。

かかとはシームレス。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル。シームレスヒール
シームレスヒール

また、かかとを包み込むカーブにも特徴を見出せます。下の画像では、過去に紹介した〈Winson Shoemaker (ウィンソンシューメーカー)〉の靴と側面のシルエットを比較したものです。どちらも、甲をストラップで留めるタイプの靴となっています。

かかとのラインの比較
かかとのラインの比較

いずれもかかとのラインを橙色の点線で示していますが、今回のサンダルはかかとのトップラインが足首側に倒れ込んでいるのが特徴的です。かといって、足首が噛まれるようなことは特にありません。丸みがシルエットに美しさをもたらしているように感じます。

個人的に好きなディテールが、オープンになっている部分から見えている中底の始末です。下の画像にてオレンジの円で示したように、中底がアッパーと同じ革で包まれています。あまり目につきにくいとはいえ、ヌメ革の中底のコバがそのまま露出していると見た目にも今ひとつですし、耐久性にも影響があるかもしれません。

アッパーと同じ革で包まれた中底
アッパーと同じ革で包まれた中底

底付けのコンストラクション

今回選択したプランでは、本来はすくい縫いは手縫いで、出し縫いは機械ということになっていました。しかしながら、諸事情で出し縫いも手縫いで仕上がりました。ウェルトのコバの張り出しも薄く仕上がっています。

つま先周りのウェルトとコバ
つま先周りのウェルトとコバ

ウェストもある程度絞り込まれています。底付けについては、特にこちらからリクエストはしておらず、すべてお任せでお願いしました。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダルの靴底の様子
靴底の様子

履いてみた

こちらのサンダル、せっかくなので靴下無しの素足で活用しています。いわゆる抜け感というやつでしょうか。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル。リネンのプルオーバーシャツ・トラウザーズと
リネンのプルオーバーシャツ・トラウザーズと。本当はシャツの袖は捲っておきたいし、第一ボタンは開けておきたい
Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル。リネンのトラウザーズと。足元にクロースアップ
足元にクロースアップ

リネンのアウターなどと組み合わせて、初秋くらいまでは素足で履き回せればと考える次第です。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル。リネンのブルゾンと
リネンのブルゾンと

最もしっくりくるのは、ショートパンツとの組み合わせでしょうか。いい年こいて短パンの着画を世間様に晒すのも憚られるところですが……。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル。ショートパンツと
ショートパンツと

最後に

今回は、出来上がったばかりのドレスシューズ仕立てのサンダルを紹介させていただきました。

Ryo Izumisawa Handmade Shoesによるドレスシューズ仕立てのサンダル

この他にも、ハンドメイドのドレスシューズに関する記事を公開しています。今回のサンダルのように日本の靴職人に仕立てていただいたものに加え、アジアのシューメーカーによる既成靴・Made-to-order (MTO) についてもレビューしていますので、ご関心があれば併せてご覧ください。

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