私の愛用品 (9) Moorerのチェスターフィールドコート「Harris」概観編

今年2023年は暖冬になると報じられており、アパレル業界では冬物のアウターの売れ行きが心配されているといった声を聞きます。そうした中で紹介するのも少しズレているかもしれませんが、今回は私がここ4, 5年の間に導入したものの中でベストヒットとなったアウターを紹介します。

イタリアのダウンウェアブランド「Moorer (ムーレー)」の「Harris (ハリス)」です。

"Harris-TI" by Moorer
“Harris-TI” by Moorer
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タイトルには「Moorerのチェスターフィールドコート」と書きましたが、「ショート丈のチェスターフィールドコートを模したダウンコート」といった方が語弊がないかもしれません。

購入したのは、パンデミック真っ只中だった2020・2021年秋冬シーズン。それ以来、冬場にジャケットを着るほどでもないけれども少し畏まった装いで外出したい際は、こればかり着ています。

思うところ・感じたことを色々と書いていると長くなってしまったので、2回に分けてお届けします。初回である今回は、保温性をもたらすインサレーションや全体の雰囲気に着目していきたいと思います。

ダウンのインサレーションと保温性

このコートの最大の特徴は、言わずもがなダウンのインサレーション。見返しに縫い付けられたタグによると、シベリア産のグース (ガチョウ) ダウンを使用しているのだとか。

見返しに縫い付けられた、高品質なダウンを使用していることを謳うタグ
見返しに縫い付けられた、高品質なダウンを使用していることを謳うタグ

首元から腰上あたりまで、ダウンのフィリングが敷き詰められています。一方、どういうわけか腰から下を覆う部分にはダウンはありません。

Harrisの内側。腰から下にはダウンが装填されていない
Harrisの内側。腰から下にはダウンが装填されていない

Moorerのコートのラインナップのうち、着丈がHarrisと同じようなものを確認してみたところ、その多くは裾までダウンが装填されています。腰から下にダウンがないのは、何か意味があってのことなのでしょうか。

また、あまり厚手だと野暮ったくなってしまうということもあってか、そこまで厚手のインサレーションではありません。上の写真に写っているタグには、マイナス5度から12度まで快適に着用可能 (High comfort) とあり、フィルパワーなどのダウンウェアとしてのスペックは示されていません。ダウンとフェザーの割合は、それぞれ95%・5%となっています。

目測で450-500 g/m程度ありそうな表地にダウンのフィリングが備わっているということもあり、私にとってはコートとしての防寒性は十二分だと感じます。むしろ、東京だとややオーバースペックかな、という気もしなくもありません。真冬の寒い日でも、ミドルゲージのニットウェアの上に着用すれば十分暖かいです。

取り外し可能な「ウィンドプルーフベスト」

前身頃のスタンドカラーベストのような部分はナイロン製で、取り外し可能。Moorer公式のショップページでは「ウィンドプルーフベスト」と呼ばれているパーツです。

取り外し可能なウィンドプルーフベスト
取り外し可能なウィンドプルーフベスト
ウィンドプルーフベストは、ファスナーで脱着が可能
ウィンドプルーフベストは、ファスナーで脱着が可能

取り外すと、下のように普通のコートの見た目となります。私は、基本的にはウィンドプルーフベストは常に装着しており、出先で暑く感じた際に外す程度です。外出する前からウィンドプルーフベストがいらない程度に暖かそうだと見込んだ日には、別のコートを着用することが多いかもしれません。

ウィンドプルーフベストを外して着用した際の様子
ウィンドプルーフベストを外して着用した際の様子

前身頃を完全に開け放つと少し間の抜けた感じになるので、私はなるべくウィンドプルーフベストは閉めるようにしています。

ウィンドプルーフベストを開け放って着用した際の様子
ウィンドプルーフベストを開け放って着用した際の様子

全体の雰囲気

続いて、全体の雰囲気に着目してみます。

スポーティなシルエット

着丈はかなり短めで、全体的にスポーティな印象を強く覚えます。私の手持ちの個体だと、着丈は実寸で93 cm。2010年代中頃に、着丈が短く、かつ肩や胸周りがナチュラルなシングルブレストのチェスターフィールド型のコートが「スポルベリーノ」ととしてもてはやされましたが、これらも着丈は90 cm代前半であった記憶です。すなわち、Harrisのシルエットは、当時のスポルベリーノとして売られてていたものに近い印象です。

膝丈のコート (こちらは着丈115 cm) と比べると、スタイルの方向性がよくわかります (この膝丈のコートはオーバーコートとして誂えられており、通常は中にジャケットを着るのですが、今回は比較のためニットウェアの上に直接羽織っています)。昨今はコートの着丈が長めに回帰しているので、少しトレンドを逸脱しているように感じなくもありません。

膝丈のコート (右) とHarris (左) を比較。Harrisがスポーティに作られていることがわかる
膝丈のコート (右) とHarris (左) を比較。Harrisがスポーティに作られていることがわかる

なお、着丈が90 cm強あるので、中にジャケットを着てオーバーコートとして装うことも可能です。アームホールのカマの深さなどを見ても、オーバーコートとして着られることを前提とした設計になっているのかなと見受けます。

落ち着きを与える腰のポケット

上で言及したようなスポルベリーノと呼ばれたコートは、大抵の場合腰ポケットはウェルト付きのスラッシュポケットとなっていました。結局、私はその手のコートを買うことはなかったのですが、寒い時に手を入れやすそうでいいな、と常々感じていました。

一方で、Harrisには傾斜のかかったフラップポケットが採用されています。全体の雰囲気がスポーティに傾きすぎないよう、端正な印象を与えるエッセンスになっているのではないかと感じます。実際のところ、もしもHarrisの腰ポケットがスラッシュポケットであれば、私はHarrisを選ぶことはなかったかもしれません。

しかしながら、寒い時に手を突っ込むには少々不便。手先の防寒は、手袋などで別途ケアする必要があります。

腰回りにはフラップポケット
腰回りにはフラップポケット

後ろ姿

後ろ姿はこのようなイメージ。やや月ジワが出ているのは、どうぞお目溢しください。本当はお直しに出した方がいいのでしょうが、ダウンのフィリングや柔らかい表地で誤魔化されてしまうので、なおざりにしています……。修理も費用が高くつきそうなので。

Harrisを着用した後ろ姿
Harrisを着用した後ろ姿

サイズ感

私は、クラシコイタリア系のジャケットやコートを既製品で買い求める際、主にサイズ48を選択します。Harrisについては、基本的にはニットウェアの上に直接着ることを想定しつつ、薄手のジャケットの上にオーバーコートとして着られるサイズを選んだ結果、サイズ48となりました。東京・銀座にMoorerの店舗があったり、一部百貨店・セレクトショップで取り扱いがあったりするようなので、試着の機会に困ることはないのではないかと思います。

最後に

今回は、私の冬のヘビーローテーションとなっているコートを紹介しました。続編として、下の記事にてHarrisのディテールに迫っています。

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